ウィンドウを閉じる

J2760 略伝集 本会 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0518A01: はし。長劒を揮ひ大石を擲ち雷呼電擊阿修羅王の如
J18_0518A02: し。當時師が掀弄せしと傳ふる巨岩今猶ほ德峰の庭
J18_0518A03: 砌に在り縱一丈厚三尺幅之に稱ふ。抑も世に師か多
J18_0518A04: 力を傳稱して縁山梵鐘に於る奇談の如き未た悉くは
J18_0518A05: 以て馮虚の説とすへからさるに似たり。是に於て一
J18_0518A06: 山大に駭き幽鬱眞に狂を發すと爲し。急使志水氏に
J18_0518A07: 告け遽かに師か志望に從ふ。師迺ち善哉を三呼し舌
J18_0518A08: を吐て大笑。直ちに筆を援て一揮す『鳥出樊籠天
J18_0518A09: 地寬 頡頑隨意興般般 溪林山澤更無畏 夜夜易
J18_0518A10: 塒高臥安』贈志水氏『多歳執權振法威 大衆莫怪發
J18_0518A11: 狂機老僧今日出門笑 溪水東流不復歸』留別闔衆『籠
J18_0518A12: を出て心のままに杜鵑本尊かけつつ飛まはらなん』
J18_0518A13: 『我ままに飛行く鳥も心あれは人の惠をいつか
J18_0518A14: 忘れん』墨痕淋漓雲煙の如し。大衆之を見て呆然自
J18_0518A15: 失すれとも復た之を奈何ともするなし。師即ち上堂
J18_0518A16: 拈香悠然佛祖を拜して去る。是に於て遂に四ひ孤立
J18_0518A17: の境に逍遙す。之を寶曆五六年の際師の齡四十八九
J18_0518B18: 歳の夏と爲す師南山を出つるや徑ちに東皐に趁き。
J18_0518B19: 地を岡崎に相して一宇を營み扁して夢菴と云ふ。柴
J18_0518B20: 扉草席陶陶乎として天眞を樂む。師の夢菴を記する
J18_0518B21: や『其爲境也。坦夷寥廓景冠天下。前祗園華嶽
J18_0518B22: 後神陵台嶺。左鹿谷駒瀑東山右鴨河鳳城西山。
J18_0518B23: 坤有鳩嶺乾有鷹峰艮有栗林巽有粟田。藩外
J18_0518B24: 碁市佛樓道觀縹緲朝暉夕陰之中。其景不可具狀
J18_0518B25: 也。其爲廬也方不盈丈。三分作界一區閨一區厨
J18_0518B26: 一區堂。西開圓窓遙拜淸泰之佛。東架方棧僅
J18_0518B27: 肆茶飯之器。南大戸以入景北小戸以入風』何
J18_0518B28: そ夫れ恬淡淸楚なる。長明か卜居も之に尚ふるなし
J18_0518B29: 以て師か性情を闚ふへし。其活計を叙するや『擎
J18_0518B30: 〓於千家以自爲活計。雖褞袍無卒歳之服弗以
J18_0518B31: 樂無道之繡衣也。雖簟瓢無兼日之糝弗以易
J18_0518B32: 無義之玉食也』謂ふ莫れ文飾なりと。師は實に托鉢
J18_0518B33: 以て活命の計と爲せしなり。其の某公に資糧の贈を
J18_0518B34: 辭謝するや『有れは焚き無れは鉢をするかなるあさ

ウィンドウを閉じる