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J2760 略伝集 本会 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0515A01: と其境遇を豹變したるか如し。然とも本地の風光は
J18_0515A02: 依然たり席にあらす卷へからす石にあらす轉すべか
J18_0515A03: らす師か先天の偃蹇と倶生の寒素は長へに隨逐して
J18_0515A04: 而も其身邊を莊嚴せり。其豐腴華榮の間に處して獨
J18_0515A05: り枯淡を主持し毫も煙火の氣なきを看る。師甞て自
J18_0515A06: ら哂ふて曰く『我むかしより紙袋にて夏は蚊をふせ
J18_0515A07: き冬は寒を防きて楮庵主人と云ひ又は紙袋法師とい
J18_0515A08: ふ其袋に書つけける。世の中を袋一つに入かへて思
J18_0515A09: へは輕き我身なりけり』戯歌集又師か此前後に於る著
J18_0515A10: 書に徴せよ。紫朱論。曇華論の諸書に獅吼して大に日
J18_0515A11: 蓮の徒を屏息せしめ。彼安心鏡問津訣を鐫すれは私
J18_0515A12: かに鷽鳩の鳴を爲して叨りに鵬翼を議する者あり。
J18_0515A13: 其辨正。辨惑。破邪。辟魔。楠石等の論より。大學
J18_0515A14: 考三彝訓を述して程朱と李王の學弊を攻擊するに至
J18_0515A15: るまで。大抵法鼓を折伏の門に鳴すにあらざるはな
J18_0515A16: し。其某卿と和歌を論して諧はさるや『量りきや和
J18_0515A17: 歌の浦うら尋ね來てうき波立て返るへしとは』『高師
J18_0515B18: 山嵐烈く吹からに落る木の葉のうらみてそゆく』戯歌集
J18_0515B19: 浩然其壁に題して去るか如き。抑も師か漫りに人を
J18_0515B20: 容れす又人に容れられさりし風釆を見るに足る。惟
J18_0515B21: り眞察僧正在て『胸襟豁如。容衆猶海。方來既勤。
J18_0515B22: 用明德懷。倚几下者。多人中圭璧』眞察僧正傳瑜伽並
J18_0515B23: ひ納れて克く師か圭璧を切瑳し而も玷るなからしむ
J18_0515B24: るあるのみ。然と雖も師の輕易に人を容れさる所由
J18_0515B25: のもの。徒に貢高自大即ち爾るにあらさるなり。其
J18_0515B26: 剛直潔白惡を憎んて假さるに坐る。而して其惡を憎
J18_0515B27: む所以は人をして善に遷らしむる所以なり。其獨善
J18_0515B28: 自養吾れ獨り淸めりとする如きは素より師の屑しと
J18_0515B29: せさるところ。是故に延請して法を聽んとする者あ
J18_0515B30: れは境の都鄙と道の遠近を論せす皆な悅んて之に應
J18_0515B31: す。師は壯年より老後に及ふまて説法談義の爲めに
J18_0515B32: 四方に遊履せしことは。到る處詞章を留めて唾咳珠
J18_0515B33: 璣の戯歌集に燦爛たるに徴見すへし。特に説法談義
J18_0515B34: のみならす講筵の致請に遇ふ亦た頻頻たり。中に就

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