浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0512A01: | 外の神韻躍然として見るへきにあらすや。師慧光門 |
J18_0512A02: | 下に在る殆んと十二年。其間師を求めて笈を負ひ内 |
J18_0512A03: | 外の墳典を研鑽して兼て國風に及ふ。學大に進む。 |
J18_0512A04: | 然とも雞群一鶴の伍にあらす枳棘竟に鳳雛を棲しむ |
J18_0512A05: | る能はす。靈雲の同宿勃蹊して互ひに妬心を懷き事 |
J18_0512A06: | に藉つて相鉤距し。終に師を譴するに不直の事を以 |
J18_0512A07: | てす。慧光長老已ことを獲す師を諭して退出せし |
J18_0512A08: | む。師は是に於て飄然再ひ孤立の生涯に入る。想ふ |
J18_0512A09: | に方に春秋十八九。野鶴閑雲山川域を隔てす。師は |
J18_0512A10: | 涙を揮つて靈雲の門を謝してより。雙鞋隻囊天下の |
J18_0512A11: | 名山靈地を跋涉するもの三五年。卒に錫を吉野山西 |
J18_0512A12: | 行菴に掛け。草衣木食唯た道維れ思ふ。乃ち歌ふて |
J18_0512A13: | 志を言ふ『苔淸水汲ほすほともなき身にもとくとく |
J18_0512A14: | 落る我涙かな』『露の身の置所とて草の菴の出て人 |
J18_0512A15: | ることに袖は濡けり』戯歌集白雲扉を鎖して室閑寂蒼 |
J18_0512A16: | 苔巖を封して水淸冽。是れ西行法師の。淺くともよ |
J18_0512A17: | しや又汲む人はあらじ我に事たる山の井の水。の詠 |
J18_0512B18: | を遺せるところ芭蕉翁の。露とくとく試みに浮世そ |
J18_0512B19: | かはや。の唱和に鳴れる苔の淸水と爲す。師か此に |
J18_0512B20: | 棲遲して悟未た徹せす靈泉に濯ひて感慨し。俯仰低 |
J18_0512B21: | 回永言に托して古賢を忍ふの意嫋嫋として餘韻を掬 |
J18_0512B22: | すへきにあらすや』吉野の奧院金峰山あり。幽險に |
J18_0512B23: | して神靈の窟宅するところなり。師は常に此に往來 |
J18_0512B24: | して苦修練行し利刀一割尅日獲果を期す。師の自叙 |
J18_0512B25: | に曰く『焚臂燈掌剝皮刺血。供佛祇法。進心 |
J18_0512B26: | 毅直。悔懺夙殃祈乞冥助。或抛身於千有餘仭 |
J18_0512B27: | 之懸崖忘己尅苦。或斷穀於百又餘旬之居諸畢 |
J18_0512B28: | 命爲期。以求一切種智之要道』問津訣師か精進勇猛 |
J18_0512B29: | 洵に斯の如きものあり。往古之高僧と雖も以て多く |
J18_0512B30: | 尚ふるなし。嘗て聞く閻浮之人遭苦發心すと師實 |
J18_0512B31: | に之れ有り焉。然と雖も猶未た一旦廓然たるものあ |
J18_0512B32: | らさるなり。師は深く其業重く障厚ふして永く凡地 |
J18_0512B33: | に淪滯するを愧ち。涕涙潜潜氣息皆な殫く。一夜巖 |
J18_0512B34: | 下に困頓して瞑目唯た死の至るを徯つ。山氣峻峭苔 |