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J2740 仏定和尚行業記 大察・隆円 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0360A01: 畏るること深し。朝暮の口實に。臨終正念にて往生
J18_0360A02: せんことは。平生の念佛にありといへども。棺をとざ
J18_0360A03: すまで。さだめがたきは凡夫の心なれば。死は恐し
J18_0360A04: きなりとまうされしが。平生かく大事なりと怖畏せ
J18_0360A05: られしゆゑにぞ。臨末何のことなく。安詳なりし
J18_0360A06: も。平生臨終。一同の安心にてありしゆゑなるべ
J18_0360A07: し。
J18_0360A08: 洛南。八幡正法寺定玄上人は。師と芝蘭の芳契淺か
J18_0360A09: らざりけり。そのこと。上人みづから。投宿編の序
J18_0360A10: に。しるし給ふがごとし。
J18_0360A11: 獅が谷。金毛院に寓居せられし。江戸人典壽律師
J18_0360A12: は。一大藏經より。諸子百家にいたるまで研究し
J18_0360A13: て。博覽の學匠なりければ。實に一時の斗望なりけ
J18_0360A14: り。さればかりそめに相見する人も。法澤を蒙らざ
J18_0360A15: るはなかりけり。我師と道交ふかく。常に往來し
J18_0360A16: て。かたみに請益せられけり。律師經論等を彫刻せ
J18_0360A17: らるる時は。師かならずその資財を助けられて成れ
J18_0360B18: るもの多し。師常に律師を讃歎して。希世の學將今
J18_0360B19: 時の三藏法師なりとたふとまれけり。律師もつねつ
J18_0360B20: ね師を稱揚して。多かる僧中にも。佛定老宿のご
J18_0360B21: とく。世出世何事にも截斷の速なる人はなし。厭欣
J18_0360B22: の志ふかく。浮世の事には貪着うすき故なるべし。
J18_0360B23: 實にめづらしき。道情ある人なりと。申されしと
J18_0360B24: なん。
J18_0360B25: 此外。宿學有德の尊者。師を讃美し給へるいと多け
J18_0360B26: れども。同やうなれば。これをはぶく。
J18_0360B27: 寫情第五
J18_0360B28: 師。大和歌をこととせられざりしかども。閑居の
J18_0360B29: 後。折にふれものに感じては。思ひを述られし。そ
J18_0360B30: のしらべ高からずといへども。道機をみるにたれる
J18_0360B31: もの。いささかここにしるす。
J18_0360B32: 閑居初聞鶯
J18_0360B33: 跡たえて問來る人もなき庭に
J18_0360B34: けさめつらしき鶯の聲

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