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J2740 仏定和尚行業記 大察・隆円 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0359A01: いふものあり。その女子岩といへる十歳なりしが。
J18_0359A02: 病おもく命終ちかきころ。しばしば師を請じて十念
J18_0359A03: をこふ。師そのいとけなふして。願生の志ふかきを
J18_0359A04: 感じ。深切に勸誡せられければ。女子よく會得し
J18_0359A05: て。念佛相續し。二月十日の朝正念に命終せり。そ
J18_0359A06: の沒後手箱の中に。さまざまの法語あまたうつしあ
J18_0359A07: りけり。いづこよりいかがしてうつしとりけん。そ
J18_0359A08: の兩親もしらざりき。その中に。めづらしき法語あ
J18_0359A09: り。
J18_0359A10: 流轉輪回の車より。三毒五欲の糸を出し。生死のか
J18_0359A11: せ輪にひまもなく。八萬四千のをさの葉に。徹りか
J18_0359A12: ねたる此ものを。ここにふしぎの御本願。他力のい
J18_0359A13: との一筋に。たすけ給へを竪として。念念稱名橫と
J18_0359A14: して。今日よ明日よとよりよせて。ぬふて仕立てた
J18_0359A15: たみ置。娑婆の大年こすならば。淨土の春のはれ着
J18_0359A16: もの。あら嬉しや。南無阿彌陀佛。
J18_0359A17: この外は一枚起請小消息の類なり。いとやさしくた
J18_0359B18: ふとき志ならずや。しかるに師の母公岩子。法名月澗
J18_0359B19: 智晴大師と號す。今この女子。いわといへるが。戒
J18_0359B20: 名晴霞童女と號す。その俗名同じく。戒名同字あ
J18_0359B21: り。面貌よく母に似たるのみか。忌日も同く。その
J18_0359B22: 手跡も老少巧拙の別はあれど。筆勢よく似たりしか
J18_0359B23: ば。師云。家母の再生し給へるにやあらん。若しか
J18_0359B24: らば。我多年追孝のいとなみ親切ならずして。なほ
J18_0359B25: いまだ生死に輪廻し。女身をだに轉じ給はざるは。
J18_0359B26: いふかひなきことなりとて。此ものがたりには。落
J18_0359B27: 涙し給へり。隆圓按るに。此女子若實に師の母なら
J18_0359B28: んには。順次往生を遂給はずといへども。人間に再
J18_0359B29: 生し。師の敎化によりて。念佛相續し。今度目出た
J18_0359B30: く往生し給ふなるべし。これ師の追孝ねもごろなる
J18_0359B31: がしからしむるところにして。母公往生の時いたり
J18_0359B32: けるならんと。たふとくありがたし。これも近世往
J18_0359B33: 生傳。二編三の卷に加ふ。
J18_0359B34: 師法のために勇猛なりしかども。またその尋常死を

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