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J2740 仏定和尚行業記 大察・隆円 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0358A01: たなづむべからず。
J18_0358A02: 寬政八年丙辰夏の頃。師。ある人他の爲に。害心あ
J18_0358A03: ることを察得し。ひそかにこれを風諫して。そのこ
J18_0358A04: ころをあらためしめんとはかる。若此人このこころ
J18_0358A05: を恣にせば人の損ずべきをいたみてなり。しかれど
J18_0358A06: もいきほひ止べからざりければ。師。いかんともせ
J18_0358A07: んすべなく佛神にむかひ彼人の心を改轉せんことを
J18_0358A08: ねがひて。一夜丹情をぬきんでいのられけるが。そ
J18_0358A09: のあしたかの人師をまねきていはく。師が察せるご
J18_0358A10: とく。我しかじかの心を發しけるが。前夜よくよく
J18_0358A11: 思惟するに。大に我あやまちなることを知れり。こ
J18_0358A12: のゆゑにふかく改悔せり。師安心すべしと。師善哉
J18_0358A13: と稱して。その善心開發を讃歎せらる。これひとへ
J18_0358A14: に佛神感應のいちじるきなりといへども。また師が
J18_0358A15: 至誠のいたすところなり。
J18_0358A16: 師。他のために病をいのらるることありて。たちど
J18_0358A17: ころに治するものあり。或は施食法を修して異病を
J18_0358B18: 治し。或は三歸をさづけて難産をすくふなんどのこ
J18_0358B19: と甚多し。しかれどもこれ皆やむことを得ざるにい
J18_0358B20: でで。こなたよりしひてすすめらるることなし。
J18_0358B21: 洛に。丸屋德兵衞といふものあり。その妻嫉妬の情
J18_0358B22: ふかく。命終の後鼬となりて。その女の聟に託し
J18_0358B23: て。家内をなやませしが。師十念をさづけ。且勸誡
J18_0358B24: 回向せられしかば。その怨靈たちどころにはなれ
J18_0358B25: て。病人本ぶくしければ。皆皆日課念佛を誓約し
J18_0358B26: て。願生淨土の人となりけるとなん。さればかかる
J18_0358B27: 奇特のこと。いくらもありけれども。師はふたたび
J18_0358B28: はなし出さるることなし。後に外よりものがたりす
J18_0358B29: るにも。實にさることもありけり。我は忘れたり。
J18_0358B30: 今汝かはなしにて思ひいづ。なんどまうされき。こ
J18_0358B31: のゆゑに書もとどめず。たまたま此事狀のみ。彼家
J18_0358B32: に往かよひし人。予にかたりしかば。なほ師にたづ
J18_0358B33: ねただして近世往生傳二編附錄に加ふ。
J18_0358B34: 天明二年壬寅の春。洛堀川丸太町に。松屋勘兵衞と

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