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J2740 仏定和尚行業記 大察・隆円 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0345A01: 又いはく。世の諺に。蟹は甲に似せて穴を堀と。ま
J18_0345A02: たこころほどなる世を經ると。これらはかしこき人
J18_0345A03: の。世を諷諫したるならん。面白きことなり。
J18_0345A04: 又云。古人のいはく。僧の寶といふは。信心と智惠
J18_0345A05: なり。信智なきゆゑ。僧となりながら。面墻の耻を
J18_0345A06: さらして。二世不得のものとなるなり。
J18_0345A07: 又云。我は邊土に生れたれば。たれ敎へ導くものも
J18_0345A08: なく。ただ自然と佛道の戀しくて僧となれるなり。
J18_0345A09: それゆゑ得度もおそく。參府もおくれたり。殊に貧
J18_0345A10: 窮にてありしかば。遊學も思ふやうならず。何とも
J18_0345A11: なき流俗僧にてあるがうへに。都鑑の任を負しか
J18_0345A12: ば。世事に奔走して。一生をあやまりたるなり。京
J18_0345A13: 都江戸なんどにうまれ。又ははやくその地に住なが
J18_0345A14: ら。不學文盲にして。ただの僧にて一生を空しくを
J18_0345A15: くるは。何とうろたへたるものにやと。いぶかしく
J18_0345A16: おもはるるなり。
J18_0345A17: ある時説法僧をさとしていはく。因縁説は活法なれ
J18_0345B18: ば。殊さら實事をよくただして説べきなり。さるを
J18_0345B19: 無道心なる渡世僧なんどの。ただ愚夫愚婦の耳をか
J18_0345B20: ざり。聞をよろこばしめんとて。梵漢の故事を。日
J18_0345B21: 本のことに説なし。或はあられぬつくりものがたり
J18_0345B22: を。實事のごとく談ずるは。無法なるうへに。佛法
J18_0345B23: を虗妄にするなれば。その罪實に拔舌地獄に入るべ
J18_0345B24: し。おそれずんばあるべからず。砂石集。發心集。
J18_0345B25: 選集鈔等の書。その時にありし事實。因縁のものが
J18_0345B26: たりより。法説にときなして。親切にさとしたるさ
J18_0345B27: ま。たふときことなり。されば因縁は一大事ぞと心
J18_0345B28: 得て。かりにもうきたる。つくり物がたりなんどは
J18_0345B29: とくべからず。
J18_0345B30: 又云。先師戒譽智典和尚は。篤實謹厚の人にて。解
J18_0345B31: 行兼備せり。生涯の行履あたかも一日のごとし。ま
J18_0345B32: たよく弟子等を敎育して。策勵親切なりき。その師
J18_0345B33: 憶譽聞貞上人は。同く來迎寺の先住なり。はじめ芝
J18_0345B34: 山に持寮して。學席にも多年勤勞し給へりとて。そ

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