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J2740 仏定和尚行業記 大察・隆円 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0344A01: 又云。僧は佛祖の照覽をはづべしといふは。昔の志
J18_0344A02: ある人のことなり。今時は在俗の見聞をはばかり。
J18_0344A03: 機嫌をまもるが第一なり。それがすぐに。佛祖の照
J18_0344A04: 覽をはばかるにもなるなり。
J18_0344A05: 又云。むかし悉達太子剃髮し給ふとき。龍王請じ
J18_0344A06: て。先佛世尊の剃刀を奉れり。それより傳へつたへて
J18_0344A07: 今日にいたれり。しからば今時我曹剃度法をなす剃
J18_0344A08: 刀は。そのまま先佛世尊より。次第相承の剃刀な
J18_0344A09: り。あにたふとからずや。是をもてこれをおもふに
J18_0344A10: 剃度師の恩實に難謝也。無量劫來。生死輪回の基本
J18_0344A11: を斷盡すること。あに容易ならんや。殊にまた我淨
J18_0344A12: 土門に入るは。生死解脱時いたれるにあらずや。さ
J18_0344A13: らば聖道家のかみそりは。自力の剃刀。淨土家の剃
J18_0344A14: 刀は。他力のかみそりともいふべし。若此宗にいら
J18_0344A15: ずんは。此たび順次の出離は覺束なきことなり。さ
J18_0344A16: れば別して我門師恩のたふときことをおもふに。萬
J18_0344A17: 劫にも報し盡すべからずとて。落涙せられけり。
J18_0344B18: 又云。古人のいはく。婬欲は人を惱亂するわざにあ
J18_0344B19: らずといへども。心を繫縛するをもて。たてて大罪
J18_0344B20: とすと。これはしばらく。樂顚倒の上にのぞめての
J18_0344B21: ことなるべし。その實は。婬欲ほど人の身心を惱亂
J18_0344B22: するものはあるまじきなり。欲火のもえあがるにせ
J18_0344B23: められて。いきほひやむべからざるに出て。犯戒す
J18_0344B24: るなるべけれども。畢竟要期のよはきなり。諸罪の
J18_0344B25: 中にて。これほど佛天のにくみにせまる惡はなしと
J18_0344B26: 見えたり。
J18_0344B27: 又云。婬肉を斷たるは。何ゆゑそといふことだにし
J18_0344B28: らずして。ただ機嫌のみに心得たるやうの僧のみ多
J18_0344B29: き世となれり。かなしきことなり。
J18_0344B30: 又云。婬肉をたつことは。難きことの易きなり。名利を
J18_0344B31: 伏するは。やすきことの甚かたきなり。
J18_0344B32: 又云。ただ財寶のみほしき間は。眞の僧にあらずと
J18_0344B33: しるべし。法寶のほしきこと。財寶のほしきやうに
J18_0344B34: 思ふべしと。常に心がくべし。

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