浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0344A01: | 又云。僧は佛祖の照覽をはづべしといふは。昔の志 |
J18_0344A02: | ある人のことなり。今時は在俗の見聞をはばかり。 |
J18_0344A03: | 機嫌をまもるが第一なり。それがすぐに。佛祖の照 |
J18_0344A04: | 覽をはばかるにもなるなり。 |
J18_0344A05: | 又云。むかし悉達太子剃髮し給ふとき。龍王請じ |
J18_0344A06: | て。先佛世尊の剃刀を奉れり。それより傳へつたへて |
J18_0344A07: | 今日にいたれり。しからば今時我曹剃度法をなす剃 |
J18_0344A08: | 刀は。そのまま先佛世尊より。次第相承の剃刀な |
J18_0344A09: | り。あにたふとからずや。是をもてこれをおもふに |
J18_0344A10: | 剃度師の恩實に難謝也。無量劫來。生死輪回の基本 |
J18_0344A11: | を斷盡すること。あに容易ならんや。殊にまた我淨 |
J18_0344A12: | 土門に入るは。生死解脱時いたれるにあらずや。さ |
J18_0344A13: | らば聖道家のかみそりは。自力の剃刀。淨土家の剃 |
J18_0344A14: | 刀は。他力のかみそりともいふべし。若此宗にいら |
J18_0344A15: | ずんは。此たび順次の出離は覺束なきことなり。さ |
J18_0344A16: | れば別して我門師恩のたふときことをおもふに。萬 |
J18_0344A17: | 劫にも報し盡すべからずとて。落涙せられけり。 |
J18_0344B18: | 又云。古人のいはく。婬欲は人を惱亂するわざにあ |
J18_0344B19: | らずといへども。心を繫縛するをもて。たてて大罪 |
J18_0344B20: | とすと。これはしばらく。樂顚倒の上にのぞめての |
J18_0344B21: | ことなるべし。その實は。婬欲ほど人の身心を惱亂 |
J18_0344B22: | するものはあるまじきなり。欲火のもえあがるにせ |
J18_0344B23: | められて。いきほひやむべからざるに出て。犯戒す |
J18_0344B24: | るなるべけれども。畢竟要期のよはきなり。諸罪の |
J18_0344B25: | 中にて。これほど佛天のにくみにせまる惡はなしと |
J18_0344B26: | 見えたり。 |
J18_0344B27: | 又云。婬肉を斷たるは。何ゆゑそといふことだにし |
J18_0344B28: | らずして。ただ機嫌のみに心得たるやうの僧のみ多 |
J18_0344B29: | き世となれり。かなしきことなり。 |
J18_0344B30: | 又云。婬肉をたつことは。難きことの易きなり。名利を |
J18_0344B31: | 伏するは。やすきことの甚かたきなり。 |
J18_0344B32: | 又云。ただ財寶のみほしき間は。眞の僧にあらずと |
J18_0344B33: | しるべし。法寶のほしきこと。財寶のほしきやうに |
J18_0344B34: | 思ふべしと。常に心がくべし。 |