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J2740 仏定和尚行業記 大察・隆円 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0338A01: こひ給ふさまなりければ。本尊の御手なる彩線をと
J18_0338A02: りてこれをさづくるに。右の手をもてこれをとり。
J18_0338A03: 左の手にまとひてこれをひかへ。尊顏を瞻仰して。
J18_0338A04: 至心に念佛せらる。弟子等助念して來迎を懇求す。
J18_0338A05: かくと告來れるにぞ。隆圓。法洲。いまた但州にいたらず。春長寺に寓せら
J18_0338A06: るいそぎ馳集りて。引磬をならして助音念佛する
J18_0338A07: に。師はただ唇舌のみはたらきしが。次第に氣息淹
J18_0338A08: えんとして。ただ寢入がごとく見えしかば。義幢。
J18_0338A09: 纊を囑するに。はやとく息とどまりぬ。何のかはり
J18_0338A10: たることもなく。宛も禪定に入るがごとし。實に寬
J18_0338A11: 政十二年。庚申十一月廿三日。夜亥剋。世壽六十
J18_0338A12: 七。菩提位中にあること五十二年なり。嗚呼化縁こ
J18_0338A13: こにとどまり。果報かしこにうつる。慈訓空しく耳
J18_0338A14: にのこれども。生相ふたたび眼に見ることなし。弟
J18_0338A15: 子等あたかも翼をうしなへる鳥のごとく。水にはな
J18_0338A16: れし魚に似たり。哀慕のおもひ胸にせまり。嘆惜の
J18_0338A17: 涙席を沾す。ただ至心に念佛して。その夜をあかし
J18_0338B18: 侍りぬ。かくて廿五日。顧命にしたがひ。遺骸をひ
J18_0338B19: とつの甕の中に收むるに。四支柔輭にして。あたか
J18_0338B20: も生存のときのごとし。二十六日。智惠光院の墓地
J18_0338B21: を卜して。壙をほることふかさ一丈二尺。四寸角の
J18_0338B22: 棺を造り。その中に甕を納め。切石をもてこれを蓋
J18_0338B23: ひ。埋葬するに。示誨を蒙りし。道俗男女馳せあつ
J18_0338B24: まりて。なげきかなしむさま。鶴林のむかしも。想
J18_0338B25: 像せられて尊とかりき。
J18_0338B26: 廿九日。洛東專念寺において葬禮の規式を營む。門
J18_0338B27: 中の寺院。舊盟の僧衆。集會諷經せらる。この日雪
J18_0338B28: さえ。雲散じて。一天溫和なること。あたかも春日の
J18_0338B29: ごとし。師の淨髮。齒骨。ならびに僧伽梨衣を。陶
J18_0338B30: 器にもり。これをこの寺に收めて。墓標をたつ。
J18_0338B31: 師沒後。報恩のため。淨髮脱齒等を收めて。その追
J18_0338B32: 孝をいとなみぬるは。丹州圓頓寺。眞言宗にて師。考妣香火の寺なり。
J18_0338B33: 州豐岡瑞泰寺。同所來迎寺等なり。
J18_0338B34: 師著述の書。古鏡説。同餘説。隱者弘法論。警鐘

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