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J2740 仏定和尚行業記 大察・隆円 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0337A01: いたるをまつべしとて。本願念佛の功德を讃歎せら
J18_0337A02: るること。平日に倍せり。さて詠ずらく
J18_0337A03: 朝な夕なこころにかけしむらさきの
J18_0337A04: 雲のむかへはいまとなりけり
J18_0337A05: おのれ(隆圓)。さりがたき寺務ありて。今日看侍する
J18_0337A06: ことあたはず。このゆゑに師にまうして。寺に歸る
J18_0337A07: 時。師いはく。今夜もし變あらば。とく人をしてし
J18_0337A08: らしむべしはやく來りて。我臨終の念佛を助音すべ
J18_0337A09: し。さらば汝がために遺囑せん。只信心をふかくし
J18_0337A10: て。ひたすら念佛すべしと。合掌して十念を授けら
J18_0337A11: る。弟子拜受して思へらく。師おとろへ給ふといへ
J18_0337A12: ども正念明了なり。なかなか今明日なんど遷化し給
J18_0337A13: ふことはあらじと。このゆゑに。退て歸寺せるな
J18_0337A14: り。後に思へば。今生の相見これをかぎりにて。今
J18_0337A15: 夜變あらばとの給ひしも師はその臨末を。知り給ひ
J18_0337A16: しにやと覺えて。たふとくも。かなしくも侍るぞか
J18_0337A17: し。
J18_0337B18: 今日師の疾大にこころよく。念佛のいとまには。何く
J18_0337B19: れとものがたりてあられしが。未の刻ばかり。來り
J18_0337B20: てしひて拜謁をこふ人あり。日頃志ふかき淨業者な
J18_0337B21: りければ。師相見してさてつげていはく。勇進念佛
J18_0337B22: するはただ平生のことなり。病をもく身疲るるにい
J18_0337B23: たりては。心勇猛なれども。口稱大にかたし。ただ
J18_0337B24: 強健有力のとき臨終の思ひをなして。つとめて念佛
J18_0337B25: すべしと。なほかつ安心の要義をとき示さるるこ
J18_0337B26: と。平日のごとし。かの人信受奉行し。十念を拜受
J18_0337B27: して退く。
J18_0337B28: 日沒の頃。顏色俄に變じ。身體自在ならず。師たち
J18_0337B29: まち西方阿彌陀佛の像に向ひ。跪坐して寂然として
J18_0337B30: 見えければ。弟子等しづかに念佛するに。師微音に
J18_0337B31: ていはく。今か正命終なり。今が正命終なり。いまが
J18_0337B32: 正命終なりと。大察かたへによりていはく。師一大
J18_0337B33: 事の時いたれり。化佛菩薩尋聲到。つとめて失念し
J18_0337B34: 給ふことなかれと。師點頭して手を出して。ものを

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