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J2740 仏定和尚行業記 大察・隆円 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0330A01: 念をつぐことなし。身心安逸にして。今世後世。怖畏
J18_0330A02: の念をのぞく。和漢古今女色のために身心を喪し。
J18_0330A03: 國家をうしなふものあげてかぞふべからず。このゆ
J18_0330A04: ゑに。世俗の君子これをいましめて。伐性の斧と
J18_0330A05: す。况や我解脱の道。若婬を斷ぜずんば。多智禪定
J18_0330A06: 現前すとも。ただこれ魔業のみ。師もよく愼て。み
J18_0330A07: づからあざむくことなかれと。およそ此禪師とまじ
J18_0330A08: はりて。得益のこともとも深かりしとて。善惡とも
J18_0330A09: に。友による事をかたりまうされき。
J18_0330A10: 師一年。富士山にのぼり。朝日の出るにむかひ高聲
J18_0330A11: 念佛せられしが。ふりかへりみれば。絶頂に金色の
J18_0330A12: 三尊顯現し給ひしが。そのまま雲のやうにきえかく
J18_0330A13: れ給へり。師これを拜して。身心爽朗なることを覺
J18_0330A14: え。たふとくありがたくて。ただはじめより朝日に
J18_0330A15: むかはずして。山上を拜すべきものをとて。後悔せ
J18_0330A16: られたり。さて山をくだるに兩人の俗士ありて。一
J18_0330A17: 人がいはく。今朝三尊の來迎を拜せしかども。おそ
J18_0330B18: く拜み奉りて。相好分明ならざりきなンど。かたる
J18_0330B19: をきくに。またく師とおなじかりければ。ふたた
J18_0330B20: び。かの三尊を拜するここちして。たふとかりしと
J18_0330B21: なん。按るに。かの山にて。朝日の出るを來迎と稱するは。毎曉この瑞あればにや。しかるに朝日のかたを拜して。山上を
J18_0330B22: 拜することをしらず。隆圓かの山にのぼりて。ただ朝日を拜して。その來迎といふ由縁をしらずとまうせしきとき。師ひそかに此こと
J18_0330B23: をかたり給ひけり。思ふにたとひはじめふり。山上を拜すとも。衆人此瑞をみるにはあらさるべし。その人にふること勿論なり。
J18_0330B24: 師しばしば宣達律師の許にいたり。戒律の要義を研
J18_0330B25: 究す。律師師をして入律せしめんことを。はかり給
J18_0330B26: ひしかども。古郷の本師老衰なりければ。孝養を廢
J18_0330B27: せんことを恐れ。また別に思願せらるる意樂もあり
J18_0330B28: ければ。かの命にしたがはず。遂に明和二年乙酉
J18_0330B29: 夏。但州に歸らる。宗例によりて。洛にいたり。賜
J18_0330B30: 香上人の 綸旨を拜受せらる。時年三十貳。同年七
J18_0330B31: 月十四日なりき。
J18_0330B32: 同四年丁亥春。師範戒譽和尚。豐岡城主京極甲斐侯
J18_0330B33: の請に應じて。同所瑞泰寺に轉住せらる。このゆゑ
J18_0330B34: に師をして。來迎寺の補處たらしめんことを檀越に

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