浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0329A01: | 攝得せらる。師禪師に參じて。しばしば心要をたた |
J18_0329A02: | き。頗る直指の旨を得らる。 |
J18_0329A03: | 泉岳寺に一禪師あり。その名をききしかども。記者これを忘たり 師と友と |
J18_0329A04: | しよし。たがひに往來して。心法を鍊磨す。禪師あ |
J18_0329A05: | る時。師に告ていはく。賢兄若改宗して。我禪門に |
J18_0329A06: | 入らば。他日古尊宿に耻べからずして。澆季ふたた |
J18_0329A07: | び 古佛の眞風を振ふべし。願くは衣をあらため |
J18_0329A08: | て。今より我門に入るべしと。師謹ていはく。我何 |
J18_0329A09: | そ祖道を光顯するの器ならん。さるをおふけなく。 |
J18_0329A10: | 禪師の策發を蒙る。實に益友といふべし。しかれど |
J18_0329A11: | ももとこれ一味の佛法なり。何ぞ禪淨の別あらん。空 |
J18_0329A12: | しく能入の門戸の別なることを論じて。正しく所入 |
J18_0329A13: | の寶殿の同なることをしらざるはいまだ凡情を泯絶 |
J18_0329A14: | せざるものといふべし。况や我門機智を泯絶して。 |
J18_0329A15: | 格外の別風あるをや。何况や。我十六歳にして淨家 |
J18_0329A16: | に入て。佛祖の恩澤をかうふり。師長の衣食をう |
J18_0329A17: | く。恩義重く深きこと山海もひとしめがたし。今若 |
J18_0329B18: | 改宗せは。その孝義をうしなふにあらずや。孝なく |
J18_0329B19: | 義なきもの。よく佛心に契當するの理あらんやと。 |
J18_0329B20: | 禪師合掌していはく。善哉師。至誠の心。言端にあ |
J18_0329B21: | ふる。その心操あるがゆゑに。我宗の人となさんこ |
J18_0329B22: | とをはかるのみ。淨家に於て。解脱の道なしといふ |
J18_0329B23: | にはあらず。またいふことなかれと。これより道交 |
J18_0329B24: | たがひにふかく。法契ますます親しかりしとなん。 |
J18_0329B25: | ある時師かの僧に問ていはく。禪師欲念發るの風情 |
J18_0329B26: | なし。しかれどもたまたま心を動ずることありや禪 |
J18_0329B27: | 師答ていはく。欲情さらにやむことなし。そもそも |
J18_0329B28: | 凡愚の迷倒。それこれをいかんがせんと。又問伏斷 |
J18_0329B29: | の術いかん。答ていはく師かの石墻を造るをみよ。 |
J18_0329B30: | やうやくつんで。高さ數丈にいたるとも。もし下よ |
J18_0329B31: | り一石をぬきとらば。悉くくづれなん。諺にいは |
J18_0329B32: | く。蟻穴針孔の如きも。萬里の大堤をくずし。千日 |
J18_0329B33: | に刈しちがやも。一時の微火にほろぶと。我心をこ |
J18_0329B34: | こに用ひて。伏斷する事多年。習ひ性となりて。二 |