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J2740 仏定和尚行業記 大察・隆円 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0329A01: 攝得せらる。師禪師に參じて。しばしば心要をたた
J18_0329A02: き。頗る直指の旨を得らる。
J18_0329A03: 泉岳寺に一禪師あり。その名をききしかども。記者これを忘たり 師と友と
J18_0329A04: しよし。たがひに往來して。心法を鍊磨す。禪師あ
J18_0329A05: る時。師に告ていはく。賢兄若改宗して。我禪門に
J18_0329A06: 入らば。他日古尊宿に耻べからずして。澆季ふたた
J18_0329A07: び 古佛の眞風を振ふべし。願くは衣をあらため
J18_0329A08: て。今より我門に入るべしと。師謹ていはく。我何
J18_0329A09: そ祖道を光顯するの器ならん。さるをおふけなく。
J18_0329A10: 禪師の策發を蒙る。實に益友といふべし。しかれど
J18_0329A11: ももとこれ一味の佛法なり。何ぞ禪淨の別あらん。空
J18_0329A12: しく能入の門戸の別なることを論じて。正しく所入
J18_0329A13: の寶殿の同なることをしらざるはいまだ凡情を泯絶
J18_0329A14: せざるものといふべし。况や我門機智を泯絶して。
J18_0329A15: 格外の別風あるをや。何况や。我十六歳にして淨家
J18_0329A16: に入て。佛祖の恩澤をかうふり。師長の衣食をう
J18_0329A17: く。恩義重く深きこと山海もひとしめがたし。今若
J18_0329B18: 改宗せは。その孝義をうしなふにあらずや。孝なく
J18_0329B19: 義なきもの。よく佛心に契當するの理あらんやと。
J18_0329B20: 禪師合掌していはく。善哉師。至誠の心。言端にあ
J18_0329B21: ふる。その心操あるがゆゑに。我宗の人となさんこ
J18_0329B22: とをはかるのみ。淨家に於て。解脱の道なしといふ
J18_0329B23: にはあらず。またいふことなかれと。これより道交
J18_0329B24: たがひにふかく。法契ますます親しかりしとなん。
J18_0329B25: ある時師かの僧に問ていはく。禪師欲念發るの風情
J18_0329B26: なし。しかれどもたまたま心を動ずることありや禪
J18_0329B27: 師答ていはく。欲情さらにやむことなし。そもそも
J18_0329B28: 凡愚の迷倒。それこれをいかんがせんと。又問伏斷
J18_0329B29: の術いかん。答ていはく師かの石墻を造るをみよ。
J18_0329B30: やうやくつんで。高さ數丈にいたるとも。もし下よ
J18_0329B31: り一石をぬきとらば。悉くくづれなん。諺にいは
J18_0329B32: く。蟻穴針孔の如きも。萬里の大堤をくずし。千日
J18_0329B33: に刈しちがやも。一時の微火にほろぶと。我心をこ
J18_0329B34: こに用ひて。伏斷する事多年。習ひ性となりて。二

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