ウィンドウを閉じる

J2730 学信和尚行状記 慧満・僧敏 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0319A01: らん。佛言。勿得隨心所欲。虧負經戒。在人
J18_0319A02: 後也。と深く心腑に銘じて忘るることなかれ
J18_0319A03: 師の文章詩偈は。幻雲稿と題して。別在す。頗る和
J18_0319A04: 歌をも好まれしかば。在京の日和歌者流の徒にもま
J18_0319A05: みえし人ありとなん。今いささか爰にしるし加ふ
J18_0319A06: 念四坊といふ遁世者。頗る風流の法子にて。行脚に
J18_0319A07: 出る時。笈の内の本尊にとて。短册に六字名號を小
J18_0319A08: 松溪義柳上人の染筆を乞てもちいたりしが。その脇
J18_0319A09: に染筆を乞ければ。歌一首上下の句を左右にわかち
J18_0319A10: て書給ふ。
J18_0319A11: 授るもうくるもともに南無阿彌陀
J18_0319A12: ほとけのちかひへだてなければ
J18_0319A13: 又その時。念四坊念佛をまうさんとすれどもまうす
J18_0319A14: 心の發らぬをいかがせましと問けるに。答られし法
J18_0319A15: 語にいはく。
J18_0319A16: 念佛をまうす心のおこりたらば我も申さめ。さる心
J18_0319A17: のおこらぬ故に。申さぬとはあやまり也。世間出世
J18_0319B18: の善事。何事もしひてつとむるにてこそ。やむこと
J18_0319B19: を得ぬ塲にもいたるなれば。ただしひてつとめよか
J18_0319B20: しとかく
J18_0319B21: こころしてひけばこそなれ露ふかき
J18_0319B22: 秋の山田にかくるなるこも
J18_0319B23: 山本何某自得の歌なりとて「ありとみれはやかてう
J18_0319B24: つろふ水の月。なしと思へば底に澄つつ」
J18_0319B25: と聞えしかば。師かへし
J18_0319B26: ありといひなしとおもふて水の泡
J18_0319B27: きえていづこに月は住べき
J18_0319B28: 「明はてて見ればひかりは跡もなし夜すがらめでし
J18_0319B29: いさよひの月
J18_0319B30: あともなきそらの光りを尋てそ
J18_0319B31: こころの月の影はしるべし
J18_0319B32: 「ともすればになひし桶の底ぬけて風より外に何を
J18_0319B33: いればや」
J18_0319B34: ぬけはてて何もたまらぬ桶の底に

ウィンドウを閉じる