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J2730 学信和尚行状記 慧満・僧敏 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0317A01: ふものあり。生質浮世の榮耀をいとひ。佛門の淸閑
J18_0317A02: をしたひける。さるから佛神三寶の感應冥加。不可
J18_0317A03: 思議の奇瑞を蒙れること多し。そのことは別記あれ
J18_0317A04: ば爰にははぶく。此女。後に師に從ひ剃髮して心譽
J18_0317A05: 慈眼と名く。此尼麥藁をもて佛ぼさつの像を造事に
J18_0317A06: 尤妙を得たり。人皆今時の中將姬と稱せり。師かの
J18_0317A07: 尼に命して汝中將法如尼に習ひて。淨土の變相を造
J18_0317A08: るべしとて。淸海曼陀羅を見せ給ひければ。慈眼。
J18_0317A09: 意を刻み思ひを苦めて。麥わらをもて佛菩薩。寶樹
J18_0317A10: 寶樓等。種種の形を造りこれを縮緬のうへにはり附
J18_0317A11: て。遂に三年の星霜を經て。其功を成就せり。その
J18_0317A12: 諸相端嚴精細巧妙なる事。凡手になれるものとは見
J18_0317A13: へず。眞に奇特といふべし。今現に我光明院の寶庫
J18_0317A14: に珍藏して。實に希代の靈寶也
J18_0317A15: 學士莊海諸國行脚の時。暫く加祐軒に留錫せり。師
J18_0317A16: にむかひて。おのれ學業增進の志あれども。晩學に
J18_0317A17: て覺束なしとまうしければ。汝が年いくぞと問給ふ
J18_0317B18: 故。二十三なりと答しかば。師顏色をただして。我
J18_0317B19: 六十に餘るといへども。老てますます盛んに。なほ
J18_0317B20: 日新の志あり死門に臨まで此志誓て怠慢せざるべ
J18_0317B21: し。汝漸く二十三。何ぞさやうに〓墮柔弱なるや
J18_0317B22: と。はげしく呵責せられてその勇猛強盛の勢に。莊
J18_0317B23: 海惣身熱汗を生じて深く慚愧せり。さて請益して。
J18_0317B24: 數數法澤を蒙れり。と後にかたりて師の慈恩を感謝
J18_0317B25: せられけり。此莊海。後に 台命を蒙り。蝦夷地。
J18_0317B26: 佛法東漸の任を負て。大臼山善光寺の開祖となれ
J18_0317B27: り。伊勢。松阪。淸光寺。信冏上人。先に師に隨侍
J18_0317B28: せられけり。ある時師かたりていはく。願生淨土の
J18_0317B29: 志操あるものにあらずんば。はじめより廢立爲正の
J18_0317B30: 法門などみだりに説べからず。愚俗に對しては。た
J18_0317B31: だまづ因果の道理を敎諭し。その信根を生ぜしめ
J18_0317B32: て。漸漸に引入して。願生淨土の志を發さしむべし
J18_0317B33: とかたり給ひき。師爲人に心を用ひられしこと。こ
J18_0317B34: れらにても察得すべし

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