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J2730 学信和尚行状記 慧満・僧敏 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0315A01:
J18_0315A02: 師護法心ふかく。如來の正法を。古に復するの宿望
J18_0315A03: ありしかば。大藏經を閲し。かねて諸宗を遍學せられ
J18_0315A04: しかども。志の歸する處は唯猒欣念佛の一行にあり
J18_0315A05: けり。この故に常に人にかたりていはく。一大藏經の
J18_0315A06: 要は淨土三部經に歸し。三經の要は吉水繪詞傳四十
J18_0315A07: 八卷に歸し。繪詞傳の要は一枚起請文に歸し。起請
J18_0315A08: 文の要は六字名號に歸するなれば。たた一向に念佛
J18_0315A09: すべしとのみ申されける。最有がたき敎示ならず
J18_0315A10: や。心あらん人此語を甘味しよろしく專修念佛し
J18_0315A11: て。往生の一大事を遂べきものなり。
J18_0315A12: 師平生六時の禮念さらに怠ることなし。寒暑といへ
J18_0315A13: ども誓てこれを廢せず。又毎年臘月三十日に。明年
J18_0315A14: の日數をかぞへ置。日別阿彌陀經十餘卷づづ讀誦し
J18_0315A15: て。一年に五千卷を滿ぜらるかくしてはやく十萬卷
J18_0315A16: は。壯年の頃よみ終れり。その後の卷數もはかり知
J18_0315A17: ぬべし。
J18_0315B18: 師日課念佛その定數をかたられしことなし。しかれ
J18_0315B19: ども數珠の緖をしばしばぬき替られしをもて考るに
J18_0315B20: 日所作數萬遍なるべし。常に袖をもておほひて珠數
J18_0315B21: くる風情をだに他に見せられしことなし。虚假に落
J18_0315B22: ざるの行狀。不日にながれざる用心。よろしく標凖
J18_0315B23: とすべきなり。
J18_0315B24: 師宮島にありては。日日後夜の勤行畢りて。但一人
J18_0315B25: 神祠に參詣せらる。いかなる風雨の日といへどもさ
J18_0315B26: らに怠ることなし。
J18_0315B27: 評云。往昔弘法大師。此明神に祈りて。末世ここに
J18_0315B28: 參詣して神前にむかふものには。かならず菩提心
J18_0315B29: を發さしめ給へと願ひ給ひしかば。明神出現まし
J18_0315B30: ましたしかにうけかはせ給ひしことを思ふに。師
J18_0315B31: の參詣も自他往生極樂の心念を生ぜしめ給へと。
J18_0315B32: 祈まうされしならんといとたふとし。
J18_0315B33: 師才思優長にして。書字・作文・墨畵などの雜技能
J18_0315B34: は。はじめ翫ぶいとまもなかりしかど中年にいたり

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