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J2730 学信和尚行状記 慧満・僧敏 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0313A01: ば。惠滿ちかくよりて。耳底に落るほどに靜かに念
J18_0313A02: 佛しければ。師眼をひらき歡喜の相面にあぶれ。虚
J18_0313A03: 空四維を見めぐらして。宛も至尊に對するがこと
J18_0313A04: く。其まま眼を閉手を納めて。晏然として入寂せら
J18_0313A05: れけり。此時定て聖衆の來迎を拜し給ふなるべし。
J18_0313A06: いとたふとくぞ覺侍る。實に寬政元年。己酉六月七
J18_0313A07: 日正午時。世壽六十八歳。僧﨟若干なり。その死相
J18_0313A08: うるはしく容貌あたかも生るがごとし
J18_0313A09: 評云。其頃洛東の賴阿上人三十餘年閑居念佛せ
J18_0313A10: り。其臨末。ああとのみまうされしかば。弟子何
J18_0313A11: をの給ふぞと尋ねしに。念佛申なりとて。目出度
J18_0313A12: 往生せられけり。今師のああと聞へしも。念佛な
J18_0313A13: る事なずらへ知ぬべし
J18_0313A14: 十日遺骸を有縁の諸人に拜瞻せしめ。十一日龕に
J18_0313A15: 收。舟にて廿日市潮音寺に送る。此日一天かき曇
J18_0313A16: り。四方の氣色常に異なり。草木も愁ひをふくみ。
J18_0313A17: 波浪も涙をそゆるがことし。遠近の道俗別を惜み。
J18_0313B18: 心を痛ましめて皆舟にてあつまれり。宮島より廿日
J18_0313B19: 市まで海上三里の間間斷なく。ふねつらなりて群集
J18_0313B20: せり。其中にあるは天花の亂墮するを見。あるは異
J18_0313B21: 香のかがはしきを聞たる人もとも多くして。おの
J18_0313B22: おの敬異せずといふものなし。送葬儀式回願終りて
J18_0313B23: 荼毘するに。少も臭氣あることなし。來會の人人。
J18_0313B24: 皆讃歎して奇特の思ひをなせり。
J18_0313B25: 十二日。遺骨を拾ひ收るに。灰は皆。靑黄赤白黑紫
J18_0313B26: 色にして。あたかも菊花を散せるがごとし。その奇
J18_0313B27: 麗なること言葉をもてのぶべからず。漸く灰を除き
J18_0313B28: 見るに。胸の間より上の方に舍利百餘粒あり。遠近
J18_0313B29: の人群集し居けるが。此ありさまを見て。讃譽して
J18_0313B30: 連聲念佛する聲。林野に滿。山海にひびけり。灰舍
J18_0313B31: 利ともに殘らす取收めて歸りぬる其跡にても。人人
J18_0313B32: 〓をさぐり求むるに舍利五六粒を得たりとなん
J18_0313B33: 或問。師を。荼毘せし後。その袈裟の一片やけざ
J18_0313B34: りしと聞り。傳中何ぞ此事をもらせるや。答てい

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