ウィンドウを閉じる

J2730 学信和尚行状記 慧満・僧敏 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0310A01: ず。古今同日の美談といふべし。今時流俗の輩。
J18_0310A02: 感驗靈瑞。遠く册子上に看過して。自己に於て修
J18_0310A03: 得するものなし。傳敎大師の御詠に。末の世にい
J18_0310A04: のりもとむるその事の。しるしなきこそしるしな
J18_0310A05: りけれと。護法の志士。たれか痛歎せざらんや
J18_0310A06: 師德行のあまり。化他のうへに於て。奇特のことども
J18_0310A07: 猶多く聞えけり。况や自行のうへにも。好相感夢等
J18_0310A08: の殊勝のこと多かるべしといへども。ただ往生を本
J18_0310A09: 願念佛に决して。その餘のことをかたらず。この故
J18_0310A10: にその自受用の境界は。他のうかがひしる所にあら
J18_0310A11: ざれば。いかでかここにしるしもあへん。その養所
J18_0310A12: のふかきこと。これらにてしりぬべし
J18_0310A13: 一年。大守先君の追福を修し給ふ時にあたり。師。
J18_0310A14: 惣じて罪人の輕重。上中下をとはず。各その罪一等
J18_0310A15: づづ。かろくなし給はんことを。しばしば乞れし
J18_0310A16: に。今の矦も先矦に順じて。崇信はあさからざりし
J18_0310A17: かども。是は國政に預ること也。僧徒のいらふべきに
J18_0310B18: あらずとて。つひに許なかりければ。師本意なき事
J18_0310B19: にや思はれけん。ふたたび大林寺に入らず。城門を
J18_0310B20: いでで。たたちに宮島に歸り。加祐軒に隱栖せられ
J18_0310B21: けり。人これをそしり笑へどもものの數ともせず。
J18_0310B22: 泰然としてあられけり。
J18_0310B23: 天明元年辛丑。師年六十。法薀殿を建立し。一大藏
J18_0310B24: 經を請して藏せらる。
J18_0310B25: 一年周防國。今市の或精舍にいたりて。諸人に圓頓
J18_0310B26: 菩薩戒をさづけらる。これを初として。光明院およ
J18_0310B27: び所所にて大戒を弘通し。念佛を勸進せられけり。
J18_0310B28: 同三年癸卯。同四年甲辰。相續て五糓登ず。天下押
J18_0310B29: 並て飢饉に及べり。宮島殊に甚し。師是を憐み普く
J18_0310B30: 飯食を施して。これをすくはばやと思はれしかども
J18_0310B31: 自力にかなひがたし。依て毎朝徒衆と共に鉢を持し
J18_0310B32: て市中を行乞せられしに。人人師の慈心をたふとみ
J18_0310B33: て粳米を施者多かりしかば。師これをもて日日未明
J18_0310B34: に粥を煮て普く施されけること凡兩月を經たり貧賤

ウィンドウを閉じる