浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0310A01: | ず。古今同日の美談といふべし。今時流俗の輩。 |
J18_0310A02: | 感驗靈瑞。遠く册子上に看過して。自己に於て修 |
J18_0310A03: | 得するものなし。傳敎大師の御詠に。末の世にい |
J18_0310A04: | のりもとむるその事の。しるしなきこそしるしな |
J18_0310A05: | りけれと。護法の志士。たれか痛歎せざらんや |
J18_0310A06: | 師德行のあまり。化他のうへに於て。奇特のことども |
J18_0310A07: | 猶多く聞えけり。况や自行のうへにも。好相感夢等 |
J18_0310A08: | の殊勝のこと多かるべしといへども。ただ往生を本 |
J18_0310A09: | 願念佛に决して。その餘のことをかたらず。この故 |
J18_0310A10: | にその自受用の境界は。他のうかがひしる所にあら |
J18_0310A11: | ざれば。いかでかここにしるしもあへん。その養所 |
J18_0310A12: | のふかきこと。これらにてしりぬべし |
J18_0310A13: | 一年。大守先君の追福を修し給ふ時にあたり。師。 |
J18_0310A14: | 惣じて罪人の輕重。上中下をとはず。各その罪一等 |
J18_0310A15: | づづ。かろくなし給はんことを。しばしば乞れし |
J18_0310A16: | に。今の矦も先矦に順じて。崇信はあさからざりし |
J18_0310A17: | かども。是は國政に預ること也。僧徒のいらふべきに |
J18_0310B18: | あらずとて。つひに許なかりければ。師本意なき事 |
J18_0310B19: | にや思はれけん。ふたたび大林寺に入らず。城門を |
J18_0310B20: | いでで。たたちに宮島に歸り。加祐軒に隱栖せられ |
J18_0310B21: | けり。人これをそしり笑へどもものの數ともせず。 |
J18_0310B22: | 泰然としてあられけり。 |
J18_0310B23: | 天明元年辛丑。師年六十。法薀殿を建立し。一大藏 |
J18_0310B24: | 經を請して藏せらる。 |
J18_0310B25: | 一年周防國。今市の或精舍にいたりて。諸人に圓頓 |
J18_0310B26: | 菩薩戒をさづけらる。これを初として。光明院およ |
J18_0310B27: | び所所にて大戒を弘通し。念佛を勸進せられけり。 |
J18_0310B28: | 同三年癸卯。同四年甲辰。相續て五糓登ず。天下押 |
J18_0310B29: | 並て飢饉に及べり。宮島殊に甚し。師是を憐み普く |
J18_0310B30: | 飯食を施して。これをすくはばやと思はれしかども |
J18_0310B31: | 自力にかなひがたし。依て毎朝徒衆と共に鉢を持し |
J18_0310B32: | て市中を行乞せられしに。人人師の慈心をたふとみ |
J18_0310B33: | て粳米を施者多かりしかば。師これをもて日日未明 |
J18_0310B34: | に粥を煮て普く施されけること凡兩月を經たり貧賤 |