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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0160A01: る故。さまで貴くも覺へざりけるに。側に僧あり
J18_0160A02: て。これは聖光上人てづから御往生の體を圖し給ふ
J18_0160A03: なりと知らせけるを聞て。信心肝に銘じて夢覺ぬ。
J18_0160A04: 一同年四月二日踏瀨村一宿の夜夢みるやう。長三尺
J18_0160A05: 程の紺地金泥の三尊の繪像。中尊は接取の御手な
J18_0160A06: り。その御肩の上より一首の歌を書下せり。歌の文
J18_0160A07: 字又金泥なり。程少し遠く拜しけれは。われここに
J18_0160A08: といふ五文字ばかり分明にて。其外はあとも見へわ
J18_0160A09: かざりけるを。われ何心なく古歌を吟ずる思ひにて
J18_0160A10: われここに佛の御名を唱れは彌陀の誓ひの捨はし
J18_0160A11: てましと。讀つつけけれは。傍なる人。それは法然
J18_0160A12: 上人の御詠歌なりといひけり。漸く近きて拜まんと
J18_0160A13: する内に障ありて夢さめけり
J18_0160A14: 一正德五年八月廿七日より。九月三日まて。彼岸七
J18_0160A15: 日の法談を勤め。同三日の日中より。翌四日の晨朝
J18_0160A16: まて。佛祖報恩の爲に。別時念佛を修行しける所に。
J18_0160A17: 三日の晩或人病者の十念回向を賴みし故初夜の勤行
J18_0160B18: の終に十念回向しけり。然るに其翌日晨朝前に夢
J18_0160B19: みらく。所はいづくとも思ひわがず。先つ虚空に勝
J18_0160B20: 相少少現ぜしか共。只影の如くにて明了ならず。
J18_0160B21: 暫時ありて。空に鳥の兩翼を展たる樣なる黑雲顯は
J18_0160B22: れ。次第に飛ひ分れ。段段鴈行に列り飛へり。恠し
J18_0160B23: く思ひて詠め居ける所に。西の空より倶利伽羅不動
J18_0160B24: あらはれ。南の方へ飛去り給へり。其次に迦樓羅㷔
J18_0160B25: の不動あらはれ。是も同しく南方に飛去り給ふ。い
J18_0160B26: よいよ奇異の想をなす所に。虚空より光明みたれ落
J18_0160B27: るが如く輝きける故。又西の空を振擧げ見けれは。
J18_0160B28: 白雲の中より。滿月の如くなる物あらはれ。金色の
J18_0160B29: 大圓光となり。其内より御長三尺計の立像の彌陀如
J18_0160B30: 來現し給ひ。段段と予が前へ來臨ましますかと見れ
J18_0160B31: は。中程にてたちまち地藏菩薩と變じ。左年に錫杖
J18_0160B32: 右年に寶珠を持給ひ。間もなくわか前に來下し給
J18_0160B33: ふ。則地藏尊の御胸を予が顏に當給ひて宣ふやう。
J18_0160B34: 汝わが名號を病者に稱へ書きあたふる事。甚嬉しく思ふ

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