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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0158A01: 往生露も心を置く事なく。今ただ浮世のいとと厭は
J18_0158A02: しく。引接の期の待遠なるを歎く斗に候。若命猶つ
J18_0158A03: らくて世にながらへ候はば。夏中下向致す事もこれ
J18_0158A04: あるべく候。心に任せて筆を染れは。稱名の暇をさ
J18_0158A05: え候故。思ひを殘して紙毫を抛つ南無阿彌陀佛已上取詮
J18_0158A06: 師或人に書與へられし一紙に云
J18_0158A07: 往生禮讃云。仰願一切往生人等。善自思量。已能今
J18_0158A08: 身願生彼國者。行住坐臥必須勵心尅己晝夜莫
J18_0158A09: 廢畢命爲期。上在一形似如少苦。前念命終後
J18_0158A10: 念即生彼國。長時永劫常受無爲法樂乃至成佛不
J18_0158A11: 逕生死豈非快哉應知然阿上人云。此文念佛
J18_0158A12: 修行之龜鏡也。收心腑莫忘。誠に自他の身を思
J18_0158A13: 忖するに。曠劫以來三界に流轉して。四生の身を受
J18_0158A14: る間。常に三途の底に沈み。希に人天の波に漂ひ。
J18_0158A15: 生死の苦患いくはくぞや。然るにたまたま人趣の生
J18_0158A16: を感じ。逢かたき佛法にあふといへとも。戒行持ち
J18_0158A17: 難く。定惠修し難し。悲哉寶の山に入ながら。手を
J18_0158B18: 空して。重て三途の舊里に歸りなんとす。誰かこれ
J18_0158B19: を歎かさらん。寔に彌陀大悲主。罪惡深重の機の爲
J18_0158B20: に起し給へる。超世の本願に遇へ奉る事。渡に船を
J18_0158B21: え。闇に燈をえたるが如し。寔に多生の大慶。歡喜
J18_0158B22: 比すべき者なし。知ぬ三界の煩籠を出て。安養の寶
J18_0158B23: 刹に至らん事。只今生に極りぬ。早く萬事を抛て。
J18_0158B24: 西方の一路を唯願唯行すべし。若餘日を賴まば心行
J18_0158B25: かならず疎かならん。無常迅速なり。明日を期し難
J18_0158B26: し。只今を必死の限と思ふべし。昔し仁和寺邊の聖
J18_0158B27: は。耳を塞て念佛し。心戒上人は蹲踞して安坐せず。
J18_0158B28: 彼も凡夫なり。我も人趣なり。機根はるかに隔つに
J18_0158B29: あらず。唯これ無常を必至と心に置くと置ざると
J18_0158B30: にあるなり。又三塗億劫の猛苦を思はは。設ひ骨を
J18_0158B31: 粉にし。身を碎くとも。更に痛む所にあらじ。况や
J18_0158B32: 易行易修の念佛をや。安養常住の快樂を思はは。設
J18_0158B33: ひ百千萬歳の勤修も。何そ退屈を生ぜん。况や一生
J18_0158B34: 暫時の相續をや。泡末の身消さる程。草露の命存ら

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