ウィンドウを閉じる

J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0154A01: 者なりとぞ仰せられける。此御示を聞て。心中にい
J18_0154A02: とありかたく思ふ内に夢覺め侍りぬ。此夢の御示に
J18_0154A03: 依て。我等が所存をかへり見るに。いかにも日ころ
J18_0154A04: 惡く心得て。日課をも勤め申せし故かく誡めまし
J18_0154A05: ましけると。慚愧の思ひにたへず。驚きて寢所を出
J18_0154A06: て身を淸めそれより後は。隨分に如法に勤め侍り
J18_0154A07: き。此感夢の事。露顯を憚るといへとも。夢中の御
J18_0154A08: 示に。此事を。諸人に能能いひ聞かせ度と宣ひし御
J18_0154A09: 詞默止がたきに依て。篤信の同行一兩輩に語り侍り
J18_0154A10: しとぞ申しける
J18_0154A11: 一師或時語りていはく。いにしへの智者先德の中
J18_0154A12: に。廣く諸法を修し給ふ事あるは。機根も勝れ。信
J18_0154A13: 心も厚くまします故。いづれの行を修し給ふとも。
J18_0154A14: 障になる事なし。譬へは富貴なる人の。諸方へあま
J18_0154A15: た音物を送れとも。本より財寶多けれは。身上に障
J18_0154A16: る事なし。貧賤なる者。その眞似をして。所所へ信
J18_0154A17: 物あまた送りなば。頓て身代困窮して渴命に及ぶべ
J18_0154B18: し。當今の人は。信薄く根劣りたる事。至極の貧人
J18_0154B19: に同じ。上代の智者連の豐なる振舞をなさは。勞し
J18_0154B20: て功なく。遂に一行をも成就する事なかるべし。こ
J18_0154B21: れ餘法を貶しめて修せざれといふにはあらず。たた
J18_0154B22: 末代の根機をかへりみて一行に功を入れて。早く成
J18_0154B23: 就せしめんと也。是に依て元祖大師も御一生の間。
J18_0154B24: 慇懃に。專修一行を勸め給へるなりとそ申されけ
J18_0154B25:
J18_0154B26: 一宇多郡に木和田氏某といへる者あり。年老たる父
J18_0154B27: 母並に妻子を捨て出家遁世し。名を正信とそ號しけ
J18_0154B28: る。信夫郡に厭求といへる。遁世ひじりのありける
J18_0154B29: を尋行て同宿しけり。然るに正信いく程なくして。
J18_0154B30: 重病を受けて苦痛甚しかりけり。同法の僧共。若宿
J18_0154B31: 業の致す所にやと。いと歎かはしき事におもひ。すな
J18_0154B32: はち無能和尚の許に至り事の始末を。おろおろ語り
J18_0154B33: 聞え奉りけれは。師申さるる樣。かの僧の發心の來
J18_0154B34: 由。いかがありけるにや。それ當時出家遁世する者

ウィンドウを閉じる