浄土宗全書を検索する
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| 巻_頁段行 | 本文 |
|---|---|
| J18_0154A01: | 者なりとぞ仰せられける。此御示を聞て。心中にい |
| J18_0154A02: | とありかたく思ふ内に夢覺め侍りぬ。此夢の御示に |
| J18_0154A03: | 依て。我等が所存をかへり見るに。いかにも日ころ |
| J18_0154A04: | 惡く心得て。日課をも勤め申せし故かく誡めまし |
| J18_0154A05: | ましけると。慚愧の思ひにたへず。驚きて寢所を出 |
| J18_0154A06: | て身を淸めそれより後は。隨分に如法に勤め侍り |
| J18_0154A07: | き。此感夢の事。露顯を憚るといへとも。夢中の御 |
| J18_0154A08: | 示に。此事を。諸人に能能いひ聞かせ度と宣ひし御 |
| J18_0154A09: | 詞默止がたきに依て。篤信の同行一兩輩に語り侍り |
| J18_0154A10: | しとぞ申しける |
| J18_0154A11: | 一師或時語りていはく。いにしへの智者先德の中 |
| J18_0154A12: | に。廣く諸法を修し給ふ事あるは。機根も勝れ。信 |
| J18_0154A13: | 心も厚くまします故。いづれの行を修し給ふとも。 |
| J18_0154A14: | 障になる事なし。譬へは富貴なる人の。諸方へあま |
| J18_0154A15: | た音物を送れとも。本より財寶多けれは。身上に障 |
| J18_0154A16: | る事なし。貧賤なる者。その眞似をして。所所へ信 |
| J18_0154A17: | 物あまた送りなば。頓て身代困窮して渴命に及ぶべ |
| J18_0154B18: | し。當今の人は。信薄く根劣りたる事。至極の貧人 |
| J18_0154B19: | に同じ。上代の智者連の豐なる振舞をなさは。勞し |
| J18_0154B20: | て功なく。遂に一行をも成就する事なかるべし。こ |
| J18_0154B21: | れ餘法を貶しめて修せざれといふにはあらず。たた |
| J18_0154B22: | 末代の根機をかへりみて一行に功を入れて。早く成 |
| J18_0154B23: | 就せしめんと也。是に依て元祖大師も御一生の間。 |
| J18_0154B24: | 慇懃に。專修一行を勸め給へるなりとそ申されけ |
| J18_0154B25: | る |
| J18_0154B26: | 一宇多郡に木和田氏某といへる者あり。年老たる父 |
| J18_0154B27: | 母並に妻子を捨て出家遁世し。名を正信とそ號しけ |
| J18_0154B28: | る。信夫郡に厭求といへる。遁世ひじりのありける |
| J18_0154B29: | を尋行て同宿しけり。然るに正信いく程なくして。 |
| J18_0154B30: | 重病を受けて苦痛甚しかりけり。同法の僧共。若宿 |
| J18_0154B31: | 業の致す所にやと。いと歎かはしき事におもひ。すな |
| J18_0154B32: | はち無能和尚の許に至り事の始末を。おろおろ語り |
| J18_0154B33: | 聞え奉りけれは。師申さるる樣。かの僧の發心の來 |
| J18_0154B34: | 由。いかがありけるにや。それ當時出家遁世する者 |