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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0153A01: かる念佛をは。疎畧になすはいか成心ぞや。誠に此
J18_0153A02: 度あひ難き本願名號に逢ひ奉りぬ。一遍にても。お
J18_0153A03: ろそかに思ふべきにあらず。然るを或は咄を搯入
J18_0153A04: れ。或は念佛一遍に。數珠を三顆四顆なと驀過事。
J18_0153A05: ゆゆしき不實の者なりとぞ誡め申されける
J18_0153A06: 一享保元年三月師相馬不亂院にて。勸化の砌。或る
J18_0153A07: 信士日課念佛を受け。名號を拜受しけり。其後名號
J18_0153A08: を裱具して。是を佛壇に揭け。念佛を勤め居ける
J18_0153A09: は。一兩日過て夢みるやう。或寺へ諸人參詣の樣子
J18_0153A10: に見へける故。人並に參りたるに。佛殿の中心に高
J18_0153A11: 座を飾れり。扨は説法あるにや。能き所へ參り合ひ
J18_0153A12: たりと悅ひて。内へ入りて見候へは。人は一人もな
J18_0153A13: し。われ心に思ふやう。今まて大勢來りつる樣に見
J18_0153A14: えしに。一人もこれ無き事。いと不審なりと。すな
J18_0153A15: はち佛壇の陰を覗きけれは。無能和尚淺黑の直裰に
J18_0153A16: 木蘭の袈裟を着し。齋を受用しておはしましけり。
J18_0153A17: 扨は御齋以後の法談なるべしと。しばらく控へ居候
J18_0153B18: 所に。師咄の樣に仰せけるは。愚僧方より。日課を
J18_0153B19: 受られ候人人の中に。惡く心得候方もあるにや。日
J18_0153B20: 課二千三千。或は五千一萬と。人人の根機相應に受
J18_0153B21: なから。其所作を大儀に思ひ。或は何時にても。其
J18_0153B22: 日の所作を勤め仕廻へは。最早心安しと思ひ。夫よ
J18_0153B23: りは一向念佛を打捨て。餘念にのみ馳居候人あり。
J18_0153B24: これゆゆしき僻事なり。設ひ百遍千徧の日課なりと
J18_0153B25: も。其數を搯り仕廻ても。暇だにあらば。心に念佛
J18_0153B26: を忘れず。隨分に稱るやうにする者なり。日所作を
J18_0153B27: 定て勤むる事も。詮はただ念佛を相續し。往生極樂
J18_0153B28: の念を忘るまじき爲なり。然るを所作の數を搯り果
J18_0153B29: て後は。ひたすら念佛を打忘れ居候事。千萬本意を
J18_0153B30: 失ひたる事なり。此事をあまねく諸人にいひ聞せ。
J18_0153B31: 能能心得申させたき者也。惣して念佛に怠るも明日
J18_0153B32: を賴む心ある故也。今日今夜の内。只今を臨終の時
J18_0153B33: 節と思ひなさは。設ひ日課はわづか百遍千遍と定む
J18_0153B34: とも。念佛はをのづから心の内に絶えず唱へらるる

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