浄土宗全書を検索する
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| 巻_頁段行 | 本文 |
|---|---|
| J18_0152A01: | こるなるべし。これを以て思ふに。在家なぞは。殊 |
| J18_0152A02: | さら妻子眷屬財寶に至るまで。悉く愛著の境界な |
| J18_0152A03: | り。其上日日の家業一として。生死流轉の因縁なら |
| J18_0152A04: | ずといふ事なし。されは臨終の期には。定て生を惜 |
| J18_0152A05: | む心いよいよ深かるべし。此一大事兼て用意あるへ |
| J18_0152A06: | き事也。若この心おこらん時には。急に兩眼をふさ |
| J18_0152A07: | ぎ。靜かに人間一生の消息を思ふべし。設ひ望のご |
| J18_0152A08: | とく存命たりとも。百年の齡を過べからず。其間の |
| J18_0152A09: | 樂み。何程の事かあらん。早く此穢土を離れて不退 |
| J18_0152A10: | の淨土に到り。永劫の快樂を得んには如じと。急に |
| J18_0152A11: | 心を引改め。偏に佛の願力を賴て。一筋に念佛し目 |
| J18_0152A12: | 出度往生の素意を遂らるべし。今此詞を以て。夢後 |
| J18_0152A13: | の記念と思ひ給ふべしと。諄諄示し申されしかは。 |
| J18_0152A14: | 同行の諸人ことごとく感涙をしたて侍りぬ |
| J18_0152A15: | 一師或時語りて云。眞實に念佛を勤る心持は。譬へ |
| J18_0152A16: | ば百人の盜人の中に在て。われ一人金を持たる思ひ |
| J18_0152A17: | なるべし。世人は皆わが法財を盜まんと欲する者 |
| J18_0152B18: | 也。たまたま得たる所の法財を。相構へて盜賊の爲 |
| J18_0152B19: | に失ふべからず。これに付ても。いよいよ佛の加護 |
| J18_0152B20: | を賴み奉るへき也とぞ申されける。私に云。天台の |
| J18_0152B21: | 止觀に。密覆金貝莫令盜見と。南山の淨心誡 |
| J18_0152B22: | 觀に。善如金玉不用他知と。明禪法印の云。人 |
| J18_0152B23: | をは人が損するなりと。これ妬て謗り。敬ひて譽 |
| J18_0152B24: | む。共にわが心行の障なり。東漸大師の宣く。すべて |
| J18_0152B25: | 親きも疎きも。貴きも賤きも。人に過たる往生の怨 |
| J18_0152B26: | はなし。それが爲に飾る心を起して。順次の往生を |
| J18_0152B27: | 遂ざればなりと。皆この心なり |
| J18_0152B28: | 一師或人の念珠を麁相に搯を見て告て申されしは。 |
| J18_0152B29: | 譬へは世人の紙を買ふを見るに。一つひとつ數をよみ |
| J18_0152B30: | て。若一錢二錢にても不足あれは。かならず改めて |
| J18_0152B31: | 取る也。又金銀を取り遣りするを見るに隨分に吟味 |
| J18_0152B32: | して。若色あひ惡く少し切なとありても。顏を赤め |
| J18_0152B33: | て互に諍ひ訇るぞかし。しばし計の渡世の小事を |
| J18_0152B34: | は。大切と思ひて。念に念を入れ。永き世の苦患を助 |