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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0151A01: き辛苦を以て。作り出したる者を。在家より三寶供
J18_0151A02: 養の爲とて。妻子のの家口を省きて出家に施す。出
J18_0151A03: 家は此施を受て世事を遁れ。心安く佛道修行するな
J18_0151A04: り。然るに僧となりて。身持を放埓にし。稼穡の艱
J18_0151A05: 難をもおもひやらず。虚なく信施を受て恐れざる
J18_0151A06: は。これ無道心の至りなり。殊に易行易修の念佛な
J18_0151A07: るに。それをも修せずして。朝には日高るまであさ
J18_0151A08: いし。或は恣に晝寢し。其外無益の事をなして。徒
J18_0151A09: に光陰を費す事。苦苦敷事なり。當來洋銅鐵丸の苦
J18_0151A10: 報。怖るべしとぞ示されける。
J18_0151A11: 一享保三年秋の季。師所勞の間。信夫郡八町目櫻内
J18_0151A12: 善四郞といへる者。師の禪室へ尋訪ひ。養性の事な
J18_0151A13: どかれこれ申候て。信夫郡の出湯は。師の御病症に
J18_0151A14: 相應の溫泉と覺え候。深山の秋色折から物幽かにし
J18_0151A15: て。保養の御爲かたかた宜しかるべく存るなり。是
J18_0151A16: 非に入湯し給へかしと慇懃に勸め申けり。師應諾の
J18_0151A17: 氣色もなかりしか共。強に勸め申すに依て。師申さる
J18_0151B18: るるやう。此度の病氣。いか樣にすとも快復あるべし
J18_0151B19: 共覺へ侍らず。しかしながら此序を以て福島邊の同
J18_0151B20: 行へ今生の暇乞せん事。幸に存する也。兎も角もを
J18_0151B21: のをの心に任すべしとて。契約して土湯へ參られけ
J18_0151B22: り。此節福島より。同行の人人。見舞の爲に代る
J18_0151B23: がわる伺候せり。或夜打寄て師に申上けるは。此間湯
J18_0151B24: 治も相應なされ候にや。御顏色も餘程能く御見へ
J18_0151B25: 候。加樣に候はば。段段御快氣あるべしなと申けれ
J18_0151B26: は。師しばらく默然として申されけるはおのおのに
J18_0151B27: 告申度事侍り。われ平生萬事を振捨て。唯往生極樂
J18_0151B28: を願ふ外他事なく。此度の病氣本復なくして。往生
J18_0151B29: を遂ん事。本望なりと。心中に悅ひ思ふといへど
J18_0151B30: も。此間人人尋來て。湯も相應し容體も能く見ゆ
J18_0151B31: るなど申さるるを聞けば。何となく心嬉しく思ふな
J18_0151B32: り。われ常常往生をいそぎ。死を待つ思ひありて。
J18_0151B33: 又加樣に心動く事はいかなる故ならんと思ふに。無
J18_0151B34: 始より。以來。生を惜みし薰習にて。自然に此心お

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