浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
| 巻_頁段行 | 本文 |
|---|---|
| J18_0151A01: | き辛苦を以て。作り出したる者を。在家より三寶供 |
| J18_0151A02: | 養の爲とて。妻子のの家口を省きて出家に施す。出 |
| J18_0151A03: | 家は此施を受て世事を遁れ。心安く佛道修行するな |
| J18_0151A04: | り。然るに僧となりて。身持を放埓にし。稼穡の艱 |
| J18_0151A05: | 難をもおもひやらず。虚なく信施を受て恐れざる |
| J18_0151A06: | は。これ無道心の至りなり。殊に易行易修の念佛な |
| J18_0151A07: | るに。それをも修せずして。朝には日高るまであさ |
| J18_0151A08: | いし。或は恣に晝寢し。其外無益の事をなして。徒 |
| J18_0151A09: | に光陰を費す事。苦苦敷事なり。當來洋銅鐵丸の苦 |
| J18_0151A10: | 報。怖るべしとぞ示されける。 |
| J18_0151A11: | 一享保三年秋の季。師所勞の間。信夫郡八町目櫻内 |
| J18_0151A12: | 善四郞といへる者。師の禪室へ尋訪ひ。養性の事な |
| J18_0151A13: | どかれこれ申候て。信夫郡の出湯は。師の御病症に |
| J18_0151A14: | 相應の溫泉と覺え候。深山の秋色折から物幽かにし |
| J18_0151A15: | て。保養の御爲かたかた宜しかるべく存るなり。是 |
| J18_0151A16: | 非に入湯し給へかしと慇懃に勸め申けり。師應諾の |
| J18_0151A17: | 氣色もなかりしか共。強に勸め申すに依て。師申さる |
| J18_0151B18: | るるやう。此度の病氣。いか樣にすとも快復あるべし |
| J18_0151B19: | 共覺へ侍らず。しかしながら此序を以て福島邊の同 |
| J18_0151B20: | 行へ今生の暇乞せん事。幸に存する也。兎も角もを |
| J18_0151B21: | のをの心に任すべしとて。契約して土湯へ參られけ |
| J18_0151B22: | り。此節福島より。同行の人人。見舞の爲に代る |
| J18_0151B23: | がわる伺候せり。或夜打寄て師に申上けるは。此間湯 |
| J18_0151B24: | 治も相應なされ候にや。御顏色も餘程能く御見へ |
| J18_0151B25: | 候。加樣に候はば。段段御快氣あるべしなと申けれ |
| J18_0151B26: | は。師しばらく默然として申されけるはおのおのに |
| J18_0151B27: | 告申度事侍り。われ平生萬事を振捨て。唯往生極樂 |
| J18_0151B28: | を願ふ外他事なく。此度の病氣本復なくして。往生 |
| J18_0151B29: | を遂ん事。本望なりと。心中に悅ひ思ふといへど |
| J18_0151B30: | も。此間人人尋來て。湯も相應し容體も能く見ゆ |
| J18_0151B31: | るなど申さるるを聞けば。何となく心嬉しく思ふな |
| J18_0151B32: | り。われ常常往生をいそぎ。死を待つ思ひありて。 |
| J18_0151B33: | 又加樣に心動く事はいかなる故ならんと思ふに。無 |
| J18_0151B34: | 始より。以來。生を惜みし薰習にて。自然に此心お |