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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0150A01: のならざる一大事なり。此時にあたりて。人の機嫌
J18_0150A02: を憚りて眞實を告ず。大切の同行の一大事を取り損
J18_0150A03: せんは。千萬不實不仁の至りなるべし。相構て眞實
J18_0150A04: 慈悲の心を起して。いか樣にも方便をめぐらし。念
J18_0150A05: 佛を勸めて。往生を遂げしむべしとそ申されける
J18_0150A06: 私に案ずるに。此中にいか樣にも方便をめぐらして
J18_0150A07: といへる語。心を著べし。いかに實を以て告ればと
J18_0150A08: て。病人の機嫌をもかへり見ず。無骨に覺悟せよな
J18_0150A09: どいひて。病人に瞋恚厭憎の心を起さしめは。敎化
J18_0150A10: の詮なかるべし。まして今はの時に臨ては。萬事心
J18_0150A11: 細かるべし。知識看病人よくよく心得あるべき事な
J18_0150A12: り。有人云。わか臨終の時には。すは只今と見ゆる
J18_0150A13: はなどいふべからず。無始より惜み習ひたる命なれ
J18_0150A14: は。心ぼそく覺ゆる事もあらんか。ただ念佛を勸む
J18_0150A15: べき也と一言芳談一休禪師の。身まかる時は。草木まて
J18_0150A16: なつかしといはれけるとなん羅山子の野槌に見えたり惣て知識看
J18_0150A17: 病人の用心は。專ら病者の心を將護し。方便して勸
J18_0150B18: むるを第一とすべきなり。
J18_0150B19: 一或時人人あまた打寄て。僧の身持惡き事などある
J18_0150B20: を。かれこれ語りあひけるを。師聞付て申されし
J18_0150B21: は。惡僧の惡事を語るは。善き人の事を惡くいふよ
J18_0150B22: りは。其罪かへつて重し。其故は。善き人の上には。
J18_0150B23: 一旦謗難をうくれども。本淸けれは。後には晴るる
J18_0150B24: 者なり。惡人は本實に濁りたれは一たひ諸人に科を
J18_0150B25: いひ立らるれは。再び淸まる事なし。およそ惡人の
J18_0150B26: 惡を造りて佛法に遠ざかるも。みな業障深重なる
J18_0150B27: 故なれは。却て慈悲を起して。これをあはれむべき
J18_0150B28: 事なり。かならず憎み謗る事なかれとぞ。誡め申さ
J18_0150B29: れける。私に云。菩薩戒に實に過ある者を謗るをは
J18_0150B30: 重禁とし。本過なき人を謗るをは。輕戒に入らるる
J18_0150B31: も。實の過は其の痛甚深くもとなき過は。終には晴
J18_0150B32: るる故其人の惱。一旦なるか故なり
J18_0150B33: 一師或時農人あまた炎天に汗を流して。耕作するを
J18_0150B34: 見て。隨侍の者に申されしは。かく農夫のたへがた

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