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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0149A01: の内。いづれにたよらん。弟が如く。佛祖の敎を信
J18_0149A02: ぜず放逸にして。空しく光陰を送り。最後に臨て。
J18_0149A03: 平生の懈怠を悔ゆとも何の益かあらん。すべからく
J18_0149A04: 兄が老翁の敎を信ぜし如く。早く本願の一行を信じ
J18_0149A05: て。毎日寸陰を惜み。隨分に念佛相續して。此度順
J18_0149A06: 次往生を遂け。速かに輪廻の里を離て。無爲の快樂
J18_0149A07: を得給ふべしと勸化せられしかは。日課念佛未受の
J18_0149A08: 者は。これを受け。已受の者は。更に勇進をぞ加へ
J18_0149A09: 侍る
J18_0149A10: 一師或る信士に尋ねられしは。御邊には一向專修に
J18_0149A11: 勤られ候やと。信士答て申さく。先年より一向專修
J18_0149A12: に相勤候。但し地藏尊には。二佛中間の衆生を守り
J18_0149A13: 給ふよし承り候て。信心增進の爲に。勤行の折に
J18_0149A14: は。大士の寶號十聲づづ稱え候。この外には。餘の
J18_0149A15: 咒願一切まじへ候はずと。師云念佛の外には。護念
J18_0149A16: の爲とて。殊更地藏の寶號を唱るに及ばず。其故
J18_0149A17: は。念佛の行者をは。一切の佛菩薩諸天善神も。こ
J18_0149B18: とごとく護念愛樂し給ふ。されば別して地藏尊を祈
J18_0149B19: らずとも。念佛たに眞實に申せは。大士の加護は。
J18_0149B20: をのづからこれあるべしと。示されしかば信士いよ
J18_0149B21: いよ一行に結歸してけり
J18_0149B22: 一師或時語りていはく。同行の内誰にても。病をう
J18_0149B23: け。快氣あるまじき樣に見えなば。指付て必死の覺
J18_0149B24: 悟をさせ念佛を勸むべし。われ世上を見るに。此度
J18_0149B25: 限りと見ゆる病人にも。其前にては。養生せられ
J18_0149B26: は。快氣あるべし。顏色も少し能きなといひて。陰
J18_0149B27: にては。彼人の病氣。此度必死と見ゆ。中なか快復
J18_0149B28: すべきにあらずなどいへる類ひままおほし。是いは
J18_0149B29: ゆる虚花不實殃及の語なり。設ひ親類眷屬の心に碍
J18_0149B30: るとも。それをは遠慮すべからず。若臨終近き病人
J18_0149B31: に向ひて。快氣あるべしなといひて。油斷さする
J18_0149B32: は。譬へは隣家に失火あらんに。火許遠し別條ある
J18_0149B33: まじなどいひて。家主に油斷せさせ。財寶悉く燒き
J18_0149B34: 失はしめんか如し。人人の臨終は。ふたたび仕直し

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