浄土宗全書を検索する
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| 巻_頁段行 | 本文 |
|---|---|
| J18_0147A01: | がたき信心なり。喩ていふに。世間の父母の一子を |
| J18_0147A02: | 思ふこと淺からず。又子の親を思ふこといく程ぞや。設 |
| J18_0147A03: | ひ至孝の子といふとも。父母の子を思ふ程にはいか |
| J18_0147A04: | があるべき。衆生の佛をしたひ奉る事も。是に准へ |
| J18_0147A05: | て知べし。佛の衆生を憐愍し給ふ事は。父母の子を |
| J18_0147A06: | 思ふよりも甚しと宣へり。されは思はぬ子をたに |
| J18_0147A07: | も思ふは。親の習ひなり。まして聊もしたふ心あら |
| J18_0147A08: | ん子を。なじかは捨べき。憶想のよはきに付ても。慈 |
| J18_0147A09: | 悲の父母をかこつべきなり。しかばかりも佛を思ひ |
| J18_0147A10: | 奉るは。能き往生の因縁なるべし。ゆめゆめ卑下す |
| J18_0147A11: | べからずと。示されしかは。彼僧。佛の慈悲の深重 |
| J18_0147A12: | なる事を思ひ知りて。いよいよ信心を增し。本の日 |
| J18_0147A13: | 課三萬稱を增して六萬聲となし。歡喜信受して歸り |
| J18_0147A14: | 侍りき。私に云此事に付て。いにしへ南都勝願院の |
| J18_0147A15: | 良徧法印。迷子を養育して。本國に還し給ひし物語 |
| J18_0147A16: | あり。併せ案ずべし。鎌倉宗要第四と載たり。 |
| J18_0147A17: | 一師或時法談の次。忙裏に間を偸みて念佛すべき |
| J18_0147B18: | 旨。喩を以て示されける。譬へはここに兄弟二人あ |
| J18_0147B19: | らん。兩人共に或る富貴の家に宮仕して。一所に居 |
| J18_0147B20: | 侍るなるべし。二人共に晝夜他事なく奉公しける |
| J18_0147B21: | 故。主人も健氣なる者に思ひ。殊にいたはりて。金錢 |
| J18_0147B22: | 衣服等に至るまで。それそれに惠み與へて召仕け |
| J18_0147B23: | り。これに依て兄弟の者いと賴母しき主人なりと思 |
| J18_0147B24: | ひ。一生はこの家に仕へて。心安く立身せんと。何 |
| J18_0147B25: | 心もなく嬉しく思ひて。朝夕奉侍しけり。爰に其隣 |
| J18_0147B26: | 家にいと親切なる老人ありて。かの兄弟二人の者を |
| J18_0147B27: | 近づけて。密に語り聞せけるは。足下達には。主人 |
| J18_0147B28: | の心底をとくと知り申さるまじ。其方達か。當分奉 |
| J18_0147B29: | 公する間は主人言の外情あるやうなれとも。元來殘 |
| J18_0147B30: | 忍き主人にて。其方達今六七年も過ぎ。年季明け候 |
| J18_0147B31: | 時には。それまで與へ置し衣類財寶。殘なく取返 |
| J18_0147B32: | し。赤裸になして。追ひ出さるるなり。其時になり |
| J18_0147B33: | ては。何ぞわが身に付たる藝能なければ。先へ行て |
| J18_0147B34: | も身命を助くへき樣なく。路頭にたち。飢死するは |