浄土宗全書を検索する
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| 巻_頁段行 | 本文 |
|---|---|
| J18_0146A01: | の端にかかり給ふ時には。聲も惜まず。われを捨て |
| J18_0146A02: | はいづくへかおはしますとすずろに悲しくて。嬰兒 |
| J18_0146A03: | にて侍りし時。母のものに罷り出しが。心ぼそく慕 |
| J18_0146A04: | はしく侍りしよりは。猶くらぶべくもなく悲しく侍 |
| J18_0146A05: | りて。阿彌陀佛いかにし給ひつるぞと。泣より外の |
| J18_0146A06: | 事なしといひ侍るとなん。慈鎭和尚この入道の事を |
| J18_0146A07: | 閑居友に載給ひて。いと細かにこそなけれども。お |
| J18_0146A08: | のづから日想觀にあたりて侍るとて。深く感心し給 |
| J18_0146A09: | ひけり。唐の楚石禪師の。幾度開窓看落月。一生 |
| J18_0146A10: | 倚檻送斜暉となんいへるも。皆願心の切なりし |
| J18_0146A11: | より起る所なるべし |
| J18_0146A12: | 一師或時語られけるは。われ性として財欲ふかく。 |
| J18_0146A13: | 衣食の事なと。かれこれ思ひ煩ふこと年久し。然るに |
| J18_0146A14: | 身の程命の程を省みてしより後は。財欲ふかき心 |
| J18_0146A15: | を。後世の勤に思ひ換へ。念佛の數遍を策さんと。 |
| J18_0146A16: | 時時增加しける間。今程十萬の日課に及べり。折に |
| J18_0146A17: | 依て。常課の外。三萬も勤め加る事。度度なりとぞ |
| J18_0146B18: | 申されける。およそ眞實の道人。生死の一大事を思 |
| J18_0146B19: | ふ事は。世人の名利を求て。汲汲たるが如くなるべ |
| J18_0146B20: | し。されど道德を好む事。利名を好むが如く。賢を |
| J18_0146B21: | 賢として欲に易ふる事は。古よりこれを難しとす。 |
| J18_0146B22: | 然るに今師の世財の貪心を飜して。出生の善貪に成 |
| J18_0146B23: | し給ふ事。いとあり難き心操なり。理趣釋に。菩薩 |
| J18_0146B24: | を大欲と名く。これ凡愚は。小利を求て大損を忘る。 |
| J18_0146B25: | 賢聖は幻妄の小欲を捨て。究竟常樂の大欲を求め給 |
| J18_0146B26: | へり。光明大師の云。淨土を貪ぜざるは無生解脱の |
| J18_0146B27: | 障なりと。これを思ふべし |
| J18_0146B28: | 一或遁世の僧師に問て云。某隨分に本願を信じ。往 |
| J18_0146B29: | 生の道あやふからず思ひ取て。念佛すること年久し。 |
| J18_0146B30: | されば佛願の賴母しき樣など思ひ續け候折には。寢 |
| J18_0146B31: | 食をも忘るる程になん覺へ侍る。然れども。常には |
| J18_0146B32: | 左にもあらず。只わすれがちにのみ成行候は。いか |
| J18_0146B33: | か侍るべきと。師答申さるる樣。それこそ凡夫の分 |
| J18_0146B34: | 劑にて侍れ。大小にも思ひいれらるる事。世にあり |