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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0144A01: 夢。或は殷の武丁の傅説を見。孔子の周公旦を見給
J18_0144A02: ひ。丁固王濬が生松懸刀の讖夢の如き。内外二典に
J18_0144A03: 亙りて。甚おほし。具に擧るに遑あらず。源氏物語
J18_0144A04: 若菜卷にも。俗の方の文を見侍りしにも。又内敎の心
J18_0144A05: を尋る中にも。夢を信ずべき事おほく侍りといへ
J18_0144A06: り。猶又わが神國夢託の靈告一にあらず。熊野高倉
J18_0144A07: は。太神宮の夢告に依て韴靈劒を得て。これを神武
J18_0144A08: 帝に奉りし事。神武紀にあり。伊勢内外の宮の御遷
J18_0144A09: 座も。皆神明の夢託に依て。鎭め祭り奉りし事。倭
J18_0144A10: 姬世紀。太田命の訓傳等に見えたり。况やわが光明
J18_0144A11: 大師の。聖僧の指授を蒙り。吉水大師の善導の來現
J18_0144A12: を感じ給ふが如き。これらの瑞夢。誰かこれを信ぜ
J18_0144A13: ざらん。今此傳に載る所も。悉く篤實の緇素。正信
J18_0144A14: の心中より。感ずる所の靈夢にして。をのをの誓書
J18_0144A15: 誓詞を以て告る所の者なり。努努疑惑を容る事なか
J18_0144A16:
J18_0144A17: 一或人問ていはく。佛光を拜する事は。持戒の德。
J18_0144B18: 或は諸善の功に依るといへる人あり。但念佛の者も
J18_0144B19: また拜する事あるべきや。師答て云。夫極重惡人一
J18_0144B20: 聲十聲の念佛にて。無漏無生の寶國に生ずる事。皆
J18_0144B21: これ本願の不思議にてあれは。光明を感見する事
J18_0144B22: も。又自力の行德には。よるまじきなり。他力難思
J18_0144B23: の行。通途の敎とは異なるべしとそ申されける
J18_0144B24: 一師或時。四邊を眺望しながら。念佛せられける
J18_0144B25: が。農夫のあら田を鋤返すを見て。俄かに落涙せら
J18_0144B26: るる事。頻りなり。傍の人尋申けれは。師申さるる
J18_0144B27: やう。あの如く農夫となり馬と成て。未明よりし
J18_0144B28: て。あらけなく叱り訇て耕をなすありさま。いかな
J18_0144B29: る先業にやと。つらつら思ひ計るに。一切衆生輪廻
J18_0144B30: 生死の間には誰にも皆かくあるべし。然るにわれら
J18_0144B31: 此度あひ難き本願に逢ひて。生死を離れ淨土に生せ
J18_0144B32: ん事。染染と肝に銘して。ありがたく覺ゆるなり。
J18_0144B33: いつか往生の本懷を遂け。又生死に立還て。彼等を
J18_0144B34: もことごとく濟度せん者をといひて。又頻に酸鼻おは

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