浄土宗全書を検索する
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| 巻_頁段行 | 本文 |
|---|---|
| J18_0142A01: | 蟲あり。惣身は金色にて足長く。東へ西撥まはりて |
| J18_0142A02: | 鳴く。其聲の面白事いふ斗なし。遙かに進み行ける |
| J18_0142A03: | に。向ふに大なる樹あり。枝葉地際よりしげりあ |
| J18_0142A04: | ひ。葉の色も一種にあらず。靑赤白金色等なり。枝 |
| J18_0142A05: | も色色にわかれたり。枝葉の間より光明四方に出て |
| J18_0142A06: | 怕明ほどなり。梢ごとに珠の網懸れり。此樹の惣體 |
| J18_0142A07: | は杉形なり。樹上には見事なる鳥二三羽まひ遊べ |
| J18_0142A08: | り。翅の色縹色に似て尾長く。四方へ亂れたり。こ |
| J18_0142A09: | の鳥の高く囀る聲。聞くに心神も澄みわたり。面白 |
| J18_0142A10: | 事かぎりなし。扨其所を過て徐徐すすみ至りけれ |
| J18_0142A11: | は。莊嚴微妙なる壇あり。其あたり惣て金色に光り |
| J18_0142A12: | わたれり。結構にかざりたる高座あり。其上に茵の |
| J18_0142A13: | 如くなる物を鋪て無能和尚安坐しあはせり。木蘭の |
| J18_0142A14: | 直裰に薄墨の袈裟を着し。右の手に如意を執り給へ |
| J18_0142A15: | り。面容の麗しき事。娑婆にて拜せしに倍して。す |
| J18_0142A16: | ずろに隨喜渴仰の涙を催し。をのづから念佛しけ |
| J18_0142A17: | り。側に位牌三基立たり。中なるは金色。左右の二 |
| J18_0142B18: | 基は。赤黄色なり。牌の前毎に金色の花足に供物を |
| J18_0142B19: | 盛たり。色色の花二瓶。燭臺二基を備へたり。此燈 |
| J18_0142B20: | 明より又金色の光り出て。四方に照り耀く事。此世 |
| J18_0142B21: | には喩ふべき物なし。此位牌の前まで。如來に供し |
| J18_0142B22: | 奉て來りけるが。某頭を低て位牌を拜せし内に。如 |
| J18_0142B23: | 來は牌の陰へかくれ給へり。地藏尊は無能和尚の背 |
| J18_0142B24: | 後へ入らせ給ふかとおもふ内に見失ひ奉りぬ。この |
| J18_0142B25: | 時某は。無能和尚のおはします壇の右邊に座せしか |
| J18_0142B26: | は。たちまち夢の覺る心地して。息を吹返し侍り |
| J18_0142B27: | ぬ。親族ども集りて。既に死したりとて。歎き居け |
| J18_0142B28: | るに。忽甦りければ。皆皆悅びあひぬる事。いふば |
| J18_0142B29: | かりなし。翌廿四日なを病床にありけるに。先に見 |
| J18_0142B30: | え給へる彌陀如來常に枕許に立副て離れ給はず。高 |
| J18_0142B31: | 聲に念佛して側なる者にも知らせけれども。餘人 |
| J18_0142B32: | は一向に見奉らすといへり。漸漸快復するに隨て拜 |
| J18_0142B33: | み奉らず。加樣の希有の現益に預り候も。偏に師の |
| J18_0142B34: | 御勸化に依て。念佛勤候故なりとて。歡喜踊躍し |