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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0141A01: しけり。これ密敎一途の説なりといへども。三井の
J18_0141A02: 相傳に。地藏は彌陀の菩提心なりと。又法藏比丘す
J18_0141A03: なはち地藏菩薩なりとも習へり。沙石集されは上品蓮
J18_0141A04: 臺の敎主地藏尊といへるも。發心菩提不二門の深理
J18_0141A05: なるべしとかたがた貴くそ侍る
J18_0141A06: 一信夫郡澤又村に齋藤利八といふ者あり。享保四年
J18_0141A07: 五月廿三日。俄かに蟲を痛む事甚し。種種治療すと
J18_0141A08: いへども効なく。半時ばかりの程施入けり。此間に
J18_0141A09: 種種不思議の境界を感見しけり。具に筆端に盡し難
J18_0141A10: しといへども。粗述る所かくの如し。既に息絶ぬと
J18_0141A11: 覺え候へは。白く細き道へただ一人出けるに。言の
J18_0141A12: 外靜かに澄わたりたる體なり。此道を西へ指て前み
J18_0141A13: 行と思ふ内に。常常信じ奉る大和田の堂に立給へる
J18_0141A14: 阿彌陀如來。御長常よりは大に。光明赫奕として來
J18_0141A15: 迎し給へり。左の御手より金色の糸を出して。直に
J18_0141A16: 某か手に授け給へり。又金色の地藏菩薩顯はれ給
J18_0141A17: ひ。これも同じやうに。金色の糸を與へましましけ
J18_0141B18: り。ありがたく思ひて。二筋の糸を兩手に取り。念
J18_0141B19: 佛申ながら御跡に隨ひて步み行けり。二尊の御相好
J18_0141B20: 殊勝なる事。言語に宣がたし。彌陀如來先に立給
J18_0141B21: ひ。二間ばかりも隔ちて地藏尊立給へり。其次二間
J18_0141B22: 斗ありて某立侍りき。二尊の御手の糸に縋り。念佛
J18_0141B23: 申まうす御後に隨て參候へは。道も最前よりは。次第
J18_0141B24: に廣くなり。心晴ばれと覺えけり。天も地も惣て金
J18_0141B25: 色に光り輝き。地の色これよりは五色に見えけり。
J18_0141B26: 其上を履み行しに。柔かにして。三四寸斗も窪み入
J18_0141B27: やうに覺ゆ。地上には牡丹の樣にて。見馴ぬ美しき
J18_0141B28: 花。數もしらず咲亂れたり。虚空にも路の左右に
J18_0141B29: も。金の網の如くなる物。ここかしこに懸りて。光
J18_0141B30: り輝くさま言に述がたし。路の左の方に池あり。其
J18_0141B31: 中には。限りも知れぬ程の。廣大なる蓮花こころよ
J18_0141B32: く開きて充滿り。其色或は白く。或は紅。又金色紫
J18_0141B33: 色の花も見えけり。其光色の鮮かなる事。娑婆の蓮
J18_0141B34: 花は。似寄たる物にもあらず。この池の岸に美しき

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