浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
| 巻_頁段行 | 本文 |
|---|---|
| J18_0141A01: | しけり。これ密敎一途の説なりといへども。三井の |
| J18_0141A02: | 相傳に。地藏は彌陀の菩提心なりと。又法藏比丘す |
| J18_0141A03: | なはち地藏菩薩なりとも習へり。沙石集されは上品蓮 |
| J18_0141A04: | 臺の敎主地藏尊といへるも。發心菩提不二門の深理 |
| J18_0141A05: | なるべしとかたがた貴くそ侍る |
| J18_0141A06: | 一信夫郡澤又村に齋藤利八といふ者あり。享保四年 |
| J18_0141A07: | 五月廿三日。俄かに蟲を痛む事甚し。種種治療すと |
| J18_0141A08: | いへども効なく。半時ばかりの程施入けり。此間に |
| J18_0141A09: | 種種不思議の境界を感見しけり。具に筆端に盡し難 |
| J18_0141A10: | しといへども。粗述る所かくの如し。既に息絶ぬと |
| J18_0141A11: | 覺え候へは。白く細き道へただ一人出けるに。言の |
| J18_0141A12: | 外靜かに澄わたりたる體なり。此道を西へ指て前み |
| J18_0141A13: | 行と思ふ内に。常常信じ奉る大和田の堂に立給へる |
| J18_0141A14: | 阿彌陀如來。御長常よりは大に。光明赫奕として來 |
| J18_0141A15: | 迎し給へり。左の御手より金色の糸を出して。直に |
| J18_0141A16: | 某か手に授け給へり。又金色の地藏菩薩顯はれ給 |
| J18_0141A17: | ひ。これも同じやうに。金色の糸を與へましましけ |
| J18_0141B18: | り。ありがたく思ひて。二筋の糸を兩手に取り。念 |
| J18_0141B19: | 佛申ながら御跡に隨ひて步み行けり。二尊の御相好 |
| J18_0141B20: | 殊勝なる事。言語に宣がたし。彌陀如來先に立給 |
| J18_0141B21: | ひ。二間ばかりも隔ちて地藏尊立給へり。其次二間 |
| J18_0141B22: | 斗ありて某立侍りき。二尊の御手の糸に縋り。念佛 |
| J18_0141B23: | 申まうす御後に隨て參候へは。道も最前よりは。次第 |
| J18_0141B24: | に廣くなり。心晴ばれと覺えけり。天も地も惣て金 |
| J18_0141B25: | 色に光り輝き。地の色これよりは五色に見えけり。 |
| J18_0141B26: | 其上を履み行しに。柔かにして。三四寸斗も窪み入 |
| J18_0141B27: | やうに覺ゆ。地上には牡丹の樣にて。見馴ぬ美しき |
| J18_0141B28: | 花。數もしらず咲亂れたり。虚空にも路の左右に |
| J18_0141B29: | も。金の網の如くなる物。ここかしこに懸りて。光 |
| J18_0141B30: | り輝くさま言に述がたし。路の左の方に池あり。其 |
| J18_0141B31: | 中には。限りも知れぬ程の。廣大なる蓮花こころよ |
| J18_0141B32: | く開きて充滿り。其色或は白く。或は紅。又金色紫 |
| J18_0141B33: | 色の花も見えけり。其光色の鮮かなる事。娑婆の蓮 |
| J18_0141B34: | 花は。似寄たる物にもあらず。この池の岸に美しき |