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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0139A01: 盟期一蓮
J18_0139A02: 淨業熏深能事圓。無能喚醒世能愆。一朝忽聽訃音
J18_0139A03: 到。不覺雙眸涙澘然
J18_0139A04: 身を捨て法のためにと空蟬の世をいとひつつさるそ
J18_0139A05: 賢こき
J18_0139A06: 一門人蓮心遺命に依て。師の舊房に住居しけるが。
J18_0139A07: 或夜の夢に。師の遺骸に傍て守り居けると覺えし
J18_0139A08: に。師たちまち兩眼を開き點頭ましましける故。蓮
J18_0139A09: 心思ふやう。師既に命終し給ひしに。かくまします
J18_0139A10: は。定て蘇生し給ふにやと。驚き悅て。近く貌を指寄
J18_0139A11: せ伺ひ奉りけれは。師言葉を出し。念佛はただ何程
J18_0139A12: も多く申に過たる事なし。しどけなく申ちらしたる
J18_0139A13: 念佛までも。皆往生の業と成なりと。仰せられて又
J18_0139A14: 本のごとく目をふさぎて死し給ふとおもふ内に夢さ
J18_0139A15: め侍りきと
J18_0139A16: 一相馬幾世橋に知足といへる遁世の僧あり。遙かに
J18_0139A17: 師の所勞のやうなと思ひ遣りて。心許なく案し居た
J18_0139B18: るに。享保四年正月朔日の夜丑みつの程。夢見ら
J18_0139B19: く。師の法相歷然として。前に現じ。念佛はただ申
J18_0139B20: せ。唯申が能なりと。繰返し三返まで宣ふを聞て。
J18_0139B21: 肝に銘じありがたく思ふ内に夢さめぬと。夫宗門の
J18_0139B22: 至極。念佛には何の子細もなく。只生れ付のままに
J18_0139B23: て。ほとけ助給へとおもひて稱るばかりなり。元祖
J18_0139B24: 大師御往生の後。三井寺の住心房に夢の中に問はれ
J18_0139B25: ても。阿彌陀佛は。またく風情もなしたた申なり
J18_0139B26: と。大師の御答ましませし事。おもひ合せて。今の
J18_0139B27: 夢想まことに感おほくぞ侍る
J18_0139B28: 一伊達郡大枝村に。佐藤吉藏といへる者あり。師の
J18_0139B29: 染筆の名號を持佛堂に掛置て。常常信崇しけるが。
J18_0139B30: 正月四日の朝。その名號より夥しく光明の輝くを拜
J18_0139B31: しけり。いとありがたき事におもひ居けるに。同六
J18_0139B32: 日師の往生し給へる由を聞て。驚き來てかくと語り
J18_0139B33: 侍る。四日は師の送葬の日なりけり
J18_0139B34: 一同郡南半田村に。松野善之丞といふ者あり。師の

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