浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
| 巻_頁段行 | 本文 |
|---|---|
| J18_0137A01: | みわけて群參せる者。其數をしらず。諸人ことごとく |
| J18_0137A02: | 結縁せんとて。われ先に棺に手を懸け。諍ひ競ふさ |
| J18_0137A03: | ま。既に危く見へける故。隨身の者一同に立寄て棺 |
| J18_0137A04: | を奪ひ取り。いそぎ墳壙へ落し入けるに。棺と共に |
| J18_0137A05: | 壙の内に飛び込し者。數多ありけり。かくばかり知 |
| J18_0137A06: | 識を慕ふ志。半座の盟り同生の縁。豈むなしからん |
| J18_0137A07: | やとそ覺ゆ。來詣の人の中。葬所にて光明佛身等種 |
| J18_0137A08: | 種の瑞を感見せし輩もあり。具に記するに遑あら |
| J18_0137A09: | ず。受化の緇白。師平生所用の念珠法衣を。一顆一 |
| J18_0137A10: | 片づづも分ち得て。神符を得るが如くに貴ひけり。 |
| J18_0137A11: | これ平日德澤の盛なるにあらずば。何そ其遺愛かく |
| J18_0137A12: | の如くなるに及はんや |
| J18_0137A13: | 一師の禪房の北にあたりて。大竹宇兵衞といふ者あ |
| J18_0137A14: | り。正月二日師の往生し給へる由を聞て。驚き來り |
| J18_0137A15: | て申けるは。某昨夜丑時の頃より。今朝明方まで。 |
| J18_0137A16: | 御庵室の方に當て。遙かに音樂の聲聞えし故。餘り |
| J18_0137A17: | 不思議に存じ。愚妻を起して聞かせ候へば。妻はた |
| J18_0137B18: | だ鶴の百羽ばかりも群居て唳くやうに聞え候由申 |
| J18_0137B19: | す。某が耳には初は人の大勢群集せる音の樣に聞 |
| J18_0137B20: | え。後には番匠の數多集て。釿うちなど致す樣に |
| J18_0137B21: | て。其響き隱隱丁丁として。拍子の面白こと言語に |
| J18_0137B22: | 及ひがたし。それよりして。鼓太鼓笛など。種種の |
| J18_0137B23: | 樂器。ききもなれぬめずらしき音しけり。いと恠き |
| J18_0137B24: | 事におもひ。猶も能聞き認めんと。外へ出て窺ひ候 |
| J18_0137B25: | へは。はや夜もやうやうしらしらと明わたり。音樂 |
| J18_0137B26: | の響も。やや幽かになり行て。遂に聞失ひ侍りきと |
| J18_0137B27: | 語る。是まさしく師の往生の時刻に當れり。 |
| J18_0137B28: | 一師康存の日。曾て同行の緇素と。法話の次に。新 |
| J18_0137B29: | 關氏申しけるは。人人の臨終の時節。兼て計り難く |
| J18_0137B30: | 候へとも。互に志を述て見候に。多くは。八月十五 |
| J18_0137B31: | 夜の頃。往生を遂け申度と望候。某なども。左樣に |
| J18_0137B32: | 願ひ候由申けれは。師仰けるは。自分なとの願に |
| J18_0137B33: | は。正月五箇日の内とおもふなり。其故は。元日よ |
| J18_0137B34: | りは。皆人年始なりとて。祝儀にのみかかりて。無常 |