浄土宗全書を検索する
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| 巻_頁段行 | 本文 |
|---|---|
| J18_0136A01: | 者にて。臨終目出たく。殊勝の往生を遂たりし人な |
| J18_0136A02: | り |
| J18_0136A03: | 一同日申刻のころ師厭求を召て。來迎讃を獨吟に靜 |
| J18_0136A04: | かに唱ふべしと仰けれは。厭求かしこまりて。枕頭 |
| J18_0136A05: | に侍りて稱へけるに。師聞て合掌し。双眼に涙を浮 |
| J18_0136A06: | べ常に此讃をありがたく聽聲せしといへども。此 |
| J18_0136A07: | 度は殊に身に染て貴く覺へ候とて。信敬の氣色。外 |
| J18_0136A08: | に顯はれてぞ見え侍る。同日初夜過。重て厭求蓮心 |
| J18_0136A09: | 二人に命じて。十樂讃を唱へしめ。第五快樂無退樂ま |
| J18_0136A10: | て聽聞せられき。同中夜勤行の上。師御手の糸。並 |
| J18_0136A11: | に三部經に付けたる紐を念珠に持添て。夫より一切 |
| J18_0136A12: | これを放れずして。頻りに念佛相續せられけり。 |
| J18_0136A13: | 師平日淨土の三經を殊に尊重せられし故。御手の糸になぞらへて。御經の糸をもひかへられけり。門人代る代る |
| J18_0136A14: | 枕頭に侍り引磬を鳴して助念を致す。次第に氣息奄 |
| J18_0136A15: | 奄として。稱名の聲かすかになり行けども。唇舌は |
| J18_0136A16: | 常に動き侍る。頭北面西の儘。體すこしも轉ぜず。 |
| J18_0136A17: | 面色咲を含て常よりも鮮かに。形容眠か如くにして |
| J18_0136B18: | 息たえ給へり。時に春秋三十七。實に享保四年巳亥 |
| J18_0136B19: | 正月二日卯の中刻なり。命終の前半時ばかり大地震 |
| J18_0136B20: | 動すること三度。看侍の者大千感動の經文を思ひ出 |
| J18_0136B21: | て。師の往生の大願成就の瑞なるべしと貴びあひけ |
| J18_0136B22: | り。嗟夫哲人去りて何くにか往ける。たた思ひを |
| J18_0136B23: | 安養淨刹の夕の雲に馳す。慈訓とどまりて忘るる時 |
| J18_0136B24: | なし。空しく涙を閻浮草廬の曉の露に添ふ。法輪軸 |
| J18_0136B25: | を折き。慈航楫を摧く。萬人ここかしこにて。化を |
| J18_0136B26: | 惜み泣き悲むありさま。鶴林中宵のむかし。思ひや |
| J18_0136B27: | らるる斗なり。門人師の遺骸を沐浴せんと欲して |
| J18_0136B28: | これを擧るに。其體はなはだ輕く。かつ柔輭なり。 |
| J18_0136B29: | 面色ますます麗しくして。祖師の眞影を見るが如 |
| J18_0136B30: | し。同三日の夜まで留め置奉りて。人人に拜ませけ |
| J18_0136B31: | るに。皆ことことく。道德熏修の致す所と。隨喜感 |
| J18_0136B32: | 歎しけり。同四日午刻。門人遺命に任せ。則庵室の |
| J18_0136B33: | 前庭に地を卜て土葬になし奉る。送葬の砌。年内よ |
| J18_0136B34: | り降積りたる高雪なりしに。遠近の僧尼士女。雪ふ |