浄土宗全書を検索する
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| 巻_頁段行 | 本文 |
|---|---|
| J18_0135A01: | 授け畢りて申されけるは。年内に極りたる往生の。 |
| J18_0135A02: | 年明るまで相延しも。これ又如來の御方便にて。世 |
| J18_0135A03: | 上の騷しき折節なれば。しばし御延給はりしと思ふ |
| J18_0135A04: | なり。年明候へは。定て間もなく往生するなるべし |
| J18_0135A05: | とて。いよいよ勇猛に稱名相續せられき。 |
| J18_0135A06: | 一同日或人師の病床に問候しけり。師蓮心を召て仰 |
| J18_0135A07: | けるは。西方淨土の地を表せる紙に包たる菓子ある |
| J18_0135A08: | べし。持來て。此人に饗ふべしと。時に蓮心曾て覺 |
| J18_0135A09: | えなかりしかは。かれこれ問ひ合せけれ共。本より誰 |
| J18_0135A10: | 誰も其覺えなしといへり。依て師に其由を申しけれ |
| J18_0135A11: | は。師仰せけるは。此間三度まて食したる環餠な |
| J18_0135A12: | り。霜柱のごとくにて透徹り。口に入るれば其儘泮 |
| J18_0135A13: | るやうにて風味はなはだ佳し。能能これを尋ぬべし |
| J18_0135A14: | と。仰ける故。有合たる菓子ども。悉く取り出して |
| J18_0135A15: | 見せ奉りしか共。いづれもこれにてはなしとて返し |
| J18_0135A16: | 給ひぬ。よつて看侍の者。相共に申けるは。師の宣ふ |
| J18_0135A17: | 所は。恐らくは此土の菓子にあらじ。定て淨土の百味 |
| J18_0135B18: | 飮食を。如來の此間御あたへましましける者と覺え |
| J18_0135B19: | 候。然る故は。舊冬廿五日より。一向に御食事これ |
| J18_0135B20: | なく候に。師の容體おとろへ給ふこともなく。殊更晝 |
| J18_0135B21: | 夜高聲に念佛相續し。常よりも勇猛に見えさせ給ふ |
| J18_0135B22: | 事。皆皆不思議に存する也と申しけれは。師聞て左 |
| J18_0135B23: | 樣の事もあるべしとなん申されける。粤に師の沒後 |
| J18_0135B24: | に。信夫郡八町目常念寺良信和尚この事を聞て語ら |
| J18_0135B25: | れしは。それに付て不思議の事侍り。われ此正月朔日 |
| J18_0135B26: | の夜夢みらく。或る山際に奇麗なる菴室あり。去年 |
| J18_0135B27: | 十一月に死去せし山本源八と申す仁と。無能和尚と |
| J18_0135B28: | 一所におはして。何か物語し給ふやうなり。前に美 |
| J18_0135B29: | しき器物に菓子を入れ置き。兩人して度度めされ候 |
| J18_0135B30: | ひけるが。和尚にも進じたく候へども。貴邊のまい |
| J18_0135B31: | るべきものにあらず。疾かへり給ひねと。申さるる |
| J18_0135B32: | と思ひし内に夢覺めけり。只今存し合せ候へは。い |
| J18_0135B33: | と不思議の夢にて侍る由申されける。此山本氏とい |
| J18_0135B34: | いるは。存生の間師の勸化により。日課八萬聲の行 |