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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0126A01: の衆生は。皆われよりして始まれる故。其福報つく
J18_0126A02: ることあることなしと。大慈菩薩の勸修西方の偈を
J18_0126A03: 引て云。能勸二人修。比自己精進。勸至十餘
J18_0126A04: 人。福德已無量。如勸百與千。名爲眞菩薩。又能
J18_0126A05: 過萬數。即是阿彌陀。唐に房翥といひし人あり。
J18_0126A06: 暴に死して陰府に至り閻魔王にま見ゆ。閻王のいは
J18_0126A07: く。案簿によるに。君曾て一老人を勸めて念佛せし
J18_0126A08: む。その人既に淨土に生ぜり。君この福德に依て。
J18_0126A09: 又淨土に生ずべし。故に召し來て相見ると。房翥か
J18_0126A10: 云。それがし先に金剛經萬卷を讀み。五臺山を巡禮
J18_0126A11: せんといふ願を起して。いまだ果さず。これに依て
J18_0126A12: 淨土に生ぜん事を欲せずと。閻王の云。誦經と巡禮
J18_0126A13: と。まことに好事なりといへども。早く淨土に生ず
J18_0126A14: るには如ずと。されども閻王その志の奪ふべからざ
J18_0126A15: る事をしりて。此界に還されけると。是を以て知る
J18_0126A16: べし。人を勸めて修せしむる者は。只往生を得るの
J18_0126A17: みにあらず。又幽冥を感動せしむることを。猶つぶ
J18_0126B18: さに淨土文に見えたり。
J18_0126B19: 一師所所に行化せらるるといへとも。或は寺院建立
J18_0126B20: の助縁なといひて。説法願ひ候所へは。一向に參ら
J18_0126B21: るる事なし。又本より自身の上にも。左樣なる勸化
J18_0126B22: は。生涯曾てこれなし。只諸人へ念佛勸進の爲とて
J18_0126B23: 請せらるる方へは。いづくへも縁に任せて參られ侍
J18_0126B24: りき。師の生質かく偏なる所ありしとぞ
J18_0126B25: 一歸依の信者の中に。或は聖境感見し。或は種種の
J18_0126B26: 現益なと蒙り候事。かれこれ沙汰しあへるに付て。
J18_0126B27: 師申さるやう。念佛の機縁純熟して。有信の人のま
J18_0126B28: ま靈益を蒙るは。これしかしながら。諸人の信を勸
J18_0126B29: 發せんとの。冥慮にてあるべし。全く自身の上の奇
J18_0126B30: 特を衒ふにもあらず。強に世の評議を憚りて。これ
J18_0126B31: をつつまは。却て冥慮を覆ひ隱すにも成べしとて。
J18_0126B32: 現益靈夢等のこと。誓書誓詞を以て。注進せるをは。
J18_0126B33: 悉く收め置かれけり。師或時喟然としていはく。近
J18_0126B34: 年緇白の中には。現益をかうふる類ひ。あまたこれあ

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