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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0125A01: 櫻とて花めく山の谷ほこり。をのが色香も春は一と
J18_0125A02: きと。誠にはかなきわざなり。むかし室の泊の遊女
J18_0125A03: が。冥きよりくらき道にぞ入ぬべき。はるかに照ら
J18_0125A04: せ山の端の月とうたひて。中川の少將の上人に結縁
J18_0125A05: し奉り。吾吉水大師も又かの泊を過ぎ給ひし時。遊
J18_0125A06: 君を敎化し給ひし事など思ひ合するに。化導の多端
J18_0125A07: なること貴ふに足れり
J18_0125A08: 一師素より。單修の少學を好みて。愽涉を縡とせ
J18_0125A09: ず。殊更後には。稱名に暇を惜みて。一向に書籍を
J18_0125A10: も廢せられし故。勸化の節にも。訓讀はいつも選擇
J18_0125A11: 集ばかり用ひられ。説相も新奇の事を要とせず。た
J18_0125A12: だ宗門の心行作業の沙汰のみ。ねんごろに申談ぜら
J18_0125A13: れ侍りき
J18_0125A14: 一日課念佛授與の事。千人までは。聊宿願あるに依
J18_0125A15: て。自分の方より。達ても勸められなとして。六七
J18_0125A16: 年を經てやうやう其數を滿ぜられき。扨師遁世の後
J18_0125A17: は。學問稽古など廢せられしかは。われ淺學無德の
J18_0125B18: 身を以て廣く勸化せん事。人儀冥慮かたがた憚りあ
J18_0125B19: りとて遠慮せられけるが。諸人の懇請のがれ難きに
J18_0125B20: よりて。時時勸化せられけり。其後次第に機縁純熟
J18_0125B21: し。就中この六七年來。所化の道俗の中。種種の現
J18_0125B22: 益などあるに依て。三年の間に。日所作授與の者。
J18_0125B23: 十四萬餘人に及へり。抑勸化の最初より。終焉の時
J18_0125B24: 節まで。日課同所の數を計るに。總て十六萬九千一
J18_0125B25: 百七十餘人を得たり。此中百遍以上十萬以下を勸め
J18_0125B26: らる。但し百遍以上を勸むる事は。宋朝の蓮花勝
J18_0125B27: 會。本朝の融通念佛の舊例に准じて。邊鄙の拙き機
J18_0125B28: を鑑み。時宜に隨ひて是を勸むる由申されき。右の
J18_0125B29: 内一萬人程は。幼兒の代りに親などの修せしもあ
J18_0125B30: り。或は亡者の追薦に勤めしも侍るとぞ
J18_0125B31: 因に記す。人をすすめて念佛せしむる功德を述べ
J18_0125B32: は。龍舒淨土文に依るに。一人を勸めて淨土を修せ
J18_0125B33: しむるは。一衆生の作佛を成就するなり。凡作佛す
J18_0125B34: る者は。かならず無量の衆生を度す。かの度する所

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