浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0125A01: | 櫻とて花めく山の谷ほこり。をのが色香も春は一と |
J18_0125A02: | きと。誠にはかなきわざなり。むかし室の泊の遊女 |
J18_0125A03: | が。冥きよりくらき道にぞ入ぬべき。はるかに照ら |
J18_0125A04: | せ山の端の月とうたひて。中川の少將の上人に結縁 |
J18_0125A05: | し奉り。吾吉水大師も又かの泊を過ぎ給ひし時。遊 |
J18_0125A06: | 君を敎化し給ひし事など思ひ合するに。化導の多端 |
J18_0125A07: | なること貴ふに足れり |
J18_0125A08: | 一師素より。單修の少學を好みて。愽涉を縡とせ |
J18_0125A09: | ず。殊更後には。稱名に暇を惜みて。一向に書籍を |
J18_0125A10: | も廢せられし故。勸化の節にも。訓讀はいつも選擇 |
J18_0125A11: | 集ばかり用ひられ。説相も新奇の事を要とせず。た |
J18_0125A12: | だ宗門の心行作業の沙汰のみ。ねんごろに申談ぜら |
J18_0125A13: | れ侍りき |
J18_0125A14: | 一日課念佛授與の事。千人までは。聊宿願あるに依 |
J18_0125A15: | て。自分の方より。達ても勸められなとして。六七 |
J18_0125A16: | 年を經てやうやう其數を滿ぜられき。扨師遁世の後 |
J18_0125A17: | は。學問稽古など廢せられしかは。われ淺學無德の |
J18_0125B18: | 身を以て廣く勸化せん事。人儀冥慮かたがた憚りあ |
J18_0125B19: | りとて遠慮せられけるが。諸人の懇請のがれ難きに |
J18_0125B20: | よりて。時時勸化せられけり。其後次第に機縁純熟 |
J18_0125B21: | し。就中この六七年來。所化の道俗の中。種種の現 |
J18_0125B22: | 益などあるに依て。三年の間に。日所作授與の者。 |
J18_0125B23: | 十四萬餘人に及へり。抑勸化の最初より。終焉の時 |
J18_0125B24: | 節まで。日課同所の數を計るに。總て十六萬九千一 |
J18_0125B25: | 百七十餘人を得たり。此中百遍以上十萬以下を勸め |
J18_0125B26: | らる。但し百遍以上を勸むる事は。宋朝の蓮花勝 |
J18_0125B27: | 會。本朝の融通念佛の舊例に准じて。邊鄙の拙き機 |
J18_0125B28: | を鑑み。時宜に隨ひて是を勸むる由申されき。右の |
J18_0125B29: | 内一萬人程は。幼兒の代りに親などの修せしもあ |
J18_0125B30: | り。或は亡者の追薦に勤めしも侍るとぞ |
J18_0125B31: | 因に記す。人をすすめて念佛せしむる功德を述べ |
J18_0125B32: | は。龍舒淨土文に依るに。一人を勸めて淨土を修せ |
J18_0125B33: | しむるは。一衆生の作佛を成就するなり。凡作佛す |
J18_0125B34: | る者は。かならず無量の衆生を度す。かの度する所 |