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J2640 厭求上人行状記 祐山 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0083A01: 譽自己を募り詞を返し承諾の氣なかりければ。法に
J18_0083A02: 私なしとて師甚だ怒り椶櫚箒を持て。うたんとせら
J18_0083A03: る誓譽即時ににげ去れり。師又それを追かけられし
J18_0083A04: に跣足にて速かに我住所專念寺まで迯込れける。師
J18_0083A05: の隨徒念故といふもの心えなく思ひ。跡より專念寺
J18_0083A06: へ尋ね行けるに本尊前にありてさめざめと感涙して
J18_0083A07: 居られけるを見て。念故も覺へず落涙して如何にや
J18_0083A08: と申ければ。誓譽のいはく我甚だ誤れり慚愧にたへ
J18_0083A09: ず早早師に懺謝せん足下先に歸り歎き給はれとて跡
J18_0083A10: を追て來れり。念故先歸りて件の趣を述て歎くに。
J18_0083A11: 師も又感涙を流して云く一寺の主老僧ともいふべ
J18_0083A12: きものを法の爲なればこそ小僧の時のごとく振舞し
J18_0083A13: を。迯去り又來りて懺謝する事といとしほらし法を
J18_0083A14: 深く思はずんばいかでか斯あらんやとて。誓譽を膝
J18_0083A15: 元へ呼互ひに感涙席を沾す。これを見るもの皆隨喜
J18_0083A16: の袖をぬらしたりき
J18_0083A17: ○師凡そ出家二衆の弟子并に法孫千人に近し。然る
J18_0083B18: に師の堂奧に至る者少なり。師笑て云て我子を失ふ
J18_0083B19: て孫を養ふ。宛も八旬の老翁三歳の孩兒を愛するに
J18_0083B20: 似たりと
J18_0083B21: ○師念佛の暇に佛像を彫刻し。又佛繪を畵く並に其
J18_0083B22: 妙を得たり。佛工畵工といへとも及ばさる所なり壯
J18_0083B23: 年より八旬に至るまで彫刻し圖畵する所の佛像都鄙
J18_0083B24: に散在して其數を知らず。中に就て最大なるものは
J18_0083B25: 攝州有馬溫泉寺の本尊坐像丈六の藥師佛。同所極樂
J18_0083B26: 寺の本尊坐像三尺の彌陀佛。并に光明大師の木像。圓
J18_0083B27: 光大師はりこの御影。一丈五尺の涅槃像の繪。同本堂
J18_0083B28: 佛後の釋迦の繪像是なり。其次には洛の專念寺の本
J18_0083B29: 尊坐像三尺の彌陀尊。洛西專福寺の本尊坐像三尺の
J18_0083B30: 彌陀尊洛北梅が畑導故院の本尊坐像三尺の彌陀尊。
J18_0083B31: 勢州射和伊馥寺の本尊坐像四尺の彌陀佛。是なり。そ
J18_0083B32: の外三尺以下二三寸に至る迄の佛像祖像所所に在て
J18_0083B33: 彫刻する所は數をしらず。又長三間半餘橫貳間半餘
J18_0083B34: の涅槃の繪像願主三井氏恭しく四條の道塲に請じて是を畵しむ又一丈五尺の當麻

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