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J2640 厭求上人行状記 祐山 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0082A01: て餘法を破らず。餘法を貴て餘法を用ひざる事如
J18_0082A02: 何。師答て云く捨るといふと破るといふとは別な
J18_0082A03: り。用るといふと貴ふといふとは又別なり。佛神に就
J18_0082A04: ていはば或は辨天毘沙門地藏觀音等の形像を立て朝
J18_0082A05: 夕恭敬禮拜するは貴びて用るといふものなり。捨て
J18_0082A06: 破らずといふは縁に任せて種種の形像に向ふ時は謹
J18_0082A07: て敬ひ奉り縁に任せて種種の説法を聞ことあらば謹で
J18_0082A08: 聽聞し奉る。形像にも向はず説法をも聞ざる時は不
J18_0082A09: 足の思ひもなく求る心もなきなり。是の如くなるは
J18_0082A10: 敬ふて用ひざるなり。破るといふにはあらず破ると
J18_0082A11: いふは我こそ一向專修の行者なれとて他の佛像に向
J18_0082A12: ふ時も拜せず。他の説法を聞時も敬はず。念佛の外
J18_0082A13: は無益の事なりとてけがらはしき樣に思ひ蔑にする
J18_0082A14: は是破るなり。宗宗に立る所各各皆その理あり猥り
J18_0082A15: に誹るべからず。譬へば酒を嗜人は餠を嫌ふて酒
J18_0082A16: こそ眞實の物なれ餠は無益の物なりといはんに下戸
J18_0082A17: の人是を許さんや。又下戸の人餠を嗜て酒を嫌ひ餠
J18_0082B18: こそ大利益の物なれ酒は甚だ無益の物なりといはん
J18_0082B19: に上戸の人是を許さんや。唯己が口腹に嗜と嗜ぬと
J18_0082B20: にてこそあれ無益とはいふべからず。然らば下戸の
J18_0082B21: 人は餠が上上の物なり。上戸の人は酒が上上の物な
J18_0082B22: るがごとし。念佛の行者も又是の如し雜行は我機
J18_0082B23: に契はざるにてこそあれ無益とはいふべからず。雜
J18_0082B24: 行も大乘甚深の妙法なれば但敬ひを作べし輕しむる
J18_0082B25: ことなかれ。往生の機の前には雜行に得すくなき故に
J18_0082B26: 取合ぬまてなり是を蔑るは大なる僻事なりと
J18_0082B27: ○師楞嚴維摩に熟し。敎外の玄機に徹する故に其説
J18_0082B28: 法獨脱超邁にして常格に泥ず一種の古氣ありて人に
J18_0082B29: 迫る。師の著す所の書都て三部あり。念佛安心と諸
J18_0082B30: 文領解と徒然要草と是なり。その卓識高論言外の妙
J18_0082B31: 旨あり實に後學の奇珍なり
J18_0082B32: ○或時師の法弟洛の專念寺現住誓譽といふもの岡崎
J18_0082B33: の禪室に來りて法話す。彼誓譽は師に相繼で説法に
J18_0082B34: 名あり時に師少少安心の違目など敎示せられしに誓

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