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J2640 厭求上人行状記 祐山 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0080A01: して忽ち蘇生す。即ち諸人に告ていはく我只今極樂
J18_0080A02: に往生し赫赫たる寶殿に上る遙に向ひの方を見渡せ
J18_0080A03: ば又殊に勝れたる嚴飾微妙の七寶宮殿あり我彼殿に
J18_0080A04: 至らんと思へども未だ進み行ことあたはず。時に一僧
J18_0080A05: ありていふ汝未だ彼にいたることあたはじ。此は是中
J18_0080A06: 品生彼は是上品生なり上品に生ぜんと思はば先娑婆
J18_0080A07: に歸りて專修念佛すべし速に上品に轉ずと。我則ち
J18_0080A08: 問ふて云く上人は是何人ぞと僧の云く我は是京師の
J18_0080A09: 厭求なりと。我又問ふ何れの時か往生せるやと僧の
J18_0080A10: 云く近き頃來れりと。我歡喜して則ち其僧の十念を
J18_0080A11: 受たり。其後の事は覺えず然るに蘇生すること斯の
J18_0080A12: 如し。我曾て上人の事を知らず實とせんや不實とせ
J18_0080A13: んやと時に座中にこれを知るものありていふ去る六
J18_0080A14: 月十一日に彼上人往生せりと。道白感涙を拭ふて云
J18_0080A15: く上人の化導無縁の衆生を度す。大悲の方便不可思
J18_0080A16: 議なりと是より專修念佛し晝夜をわかたず。同月十
J18_0080A17: 四日に安然として大往生を遂たり
J18_0080B18: ○攝州有馬に立厭といふ僧あり。師の弟子なり。正
J18_0080B19: 德四年四月下旬師の塔を立んと欲して上洛し法兄了
J18_0080B20: 厭に就く師の剃たる髮を乞得て歡喜し有馬に歸る。
J18_0080B21: 淸吟庵の尼衆師の弟子なり是を拜せん事を願ふ。大坂の宗
J18_0080B22: 鑑といふものあり同庵にありて共に是を請ず。立厭
J18_0080B23: 即ち需に應じて是を發くに。忽ち舍利一粒迸り出。
J18_0080B24: 皆悉く驚歎して委しく探り求むるに都合舍利六粒を
J18_0080B25: 得たり。其形極小にして芥子のごとし。圓滿にして
J18_0080B26: 光明あり白き事白髮の色に似たり堅き事金剛の如
J18_0080B27: し。其内三粒は立厭持し歸りて專修庵に安置す。二
J18_0080B28: 粒は淸吟庵に置き。一粒は宗鑑頂戴し浪華に歸りて
J18_0080B29: 尊敬す。後に段段分じて多くなりしゆへ厭求庵導故
J18_0080B30: 院へもわかち納めて靈寶とす
J18_0080B31: ○大凡師一生の行履。寺院を領ぜず灑灑落落として
J18_0080B32: 雲水の境界なり。常念佛を好まず建立并に奉加を堅
J18_0080B33: く誡しむ。平生示していはく世の諺に奉加帳は狼も
J18_0080B34: いとふて逃るといふなり。仍て奉加は一向せぬがよ

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