浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0076A01: | 若男女を招き寄て師の説法を拜聽せしむ。時に仙石 |
J18_0076A02: | 氏も又自から外縁に出跪て共に聽聞す。師の説法の |
J18_0076A03: | 體たらく汝等よくきけ。およそ人と生れ出たる甲斐 |
J18_0076A04: | には仁義禮智信の五常を守り。親としては慈にとど |
J18_0076A05: | まり。子としては孝にとどまり。兄弟相たすけ夫婦 |
J18_0076A06: | 和順し聊も不義無道なる惡行を致す事なかれ。先第 |
J18_0076A07: | 一に君の御恩を忘れす年貢上納少も疎略を存べから |
J18_0076A08: | ず。若これを疎にせば忽ち冥加盡ぬべし。扨未來を |
J18_0076A09: | 恐れて淨土往生を願ふべし往生の道は彌陀の本願に |
J18_0076A10: | 縋りて專心念佛する外はなし。後世願ふ隙とて別に |
J18_0076A11: | のけてあるべからず唯平日行住坐臥に心をかけて念 |
J18_0076A12: | 佛するを要とす。此通に修行せば現世安穩後生極樂 |
J18_0076A13: | 少しも疑ひなしと大畧此の如し説法畢りて仙石氏そ |
J18_0076A14: | の國民共に向ひて申されけるは君の御影にて今日未 |
J18_0076A15: | 曾有の法を拜聽し現世未來の大益を蒙る事甚だ大幸 |
J18_0076A16: | なり愼て忘るることなかれと申渡されければ老若男女 |
J18_0076A17: | 一同にあつといふて感涙を流しけり此仙石氏日比國 |
J18_0076B18: | 民を憐む事一子のごとし仍て國中の輩父母のごとく |
J18_0076B19: | 思ひける折節なれば一入感喜に堪ざりしとなり |
J18_0076B20: | ○元祿の末。洛の本山淨花院良秀上人。師を請じて |
J18_0076B21: | 祖堂にして説法し給へと願求せらる。師再三固辭す |
J18_0076B22: | 師心願ありて久しく高座に登りて説法せず故に辭退 |
J18_0076B23: | に及べり。仍て良秀上人駕を師の草庵に枉て自から |
J18_0076B24: | 請じて云く。我老僧の勞を思はざるにはあらず唯憾 |
J18_0076B25: | むらくは本山大師前の法縁を闕ことを。我深く是を憂 |
J18_0076B26: | るのみ。師若大師前にありて纔に口を開かば上祖恩 |
J18_0076B27: | を報し下愚迷を度し又我望を滿足す。末寺檀家一統 |
J18_0076B28: | に求願する所なり機縁既に熟す何ぞ是を思はざる |
J18_0076B29: | や。且密に高貴の命の我に託して請ずるあり固辭す |
J18_0076B30: | ることなかれと。爰に於て師已ことを得ず遂に許諾し畢 |
J18_0076B31: | れり。時維八月。師本堂大師の前に説法す。洛中の |
J18_0076B32: | 緇素歡喜踊躍して曉天を侵して至る堂上の貴族商家 |
J18_0076B33: | の男女席を爭ひ座を奪ふ門庭群を成して更に寸隙な |
J18_0076B34: | し。是のごとくすること七日説法既に畢りぬ。回向 |