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J2640 厭求上人行状記 祐山 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0076A01: 若男女を招き寄て師の説法を拜聽せしむ。時に仙石
J18_0076A02: 氏も又自から外縁に出跪て共に聽聞す。師の説法の
J18_0076A03: 體たらく汝等よくきけ。およそ人と生れ出たる甲斐
J18_0076A04: には仁義禮智信の五常を守り。親としては慈にとど
J18_0076A05: まり。子としては孝にとどまり。兄弟相たすけ夫婦
J18_0076A06: 和順し聊も不義無道なる惡行を致す事なかれ。先第
J18_0076A07: 一に君の御恩を忘れす年貢上納少も疎略を存べから
J18_0076A08: ず。若これを疎にせば忽ち冥加盡ぬべし。扨未來を
J18_0076A09: 恐れて淨土往生を願ふべし往生の道は彌陀の本願に
J18_0076A10: 縋りて專心念佛する外はなし。後世願ふ隙とて別に
J18_0076A11: のけてあるべからず唯平日行住坐臥に心をかけて念
J18_0076A12: 佛するを要とす。此通に修行せば現世安穩後生極樂
J18_0076A13: 少しも疑ひなしと大畧此の如し説法畢りて仙石氏そ
J18_0076A14: の國民共に向ひて申されけるは君の御影にて今日未
J18_0076A15: 曾有の法を拜聽し現世未來の大益を蒙る事甚だ大幸
J18_0076A16: なり愼て忘るることなかれと申渡されければ老若男女
J18_0076A17: 一同にあつといふて感涙を流しけり此仙石氏日比國
J18_0076B18: 民を憐む事一子のごとし仍て國中の輩父母のごとく
J18_0076B19: 思ひける折節なれば一入感喜に堪ざりしとなり
J18_0076B20: ○元祿の末。洛の本山淨花院良秀上人。師を請じて
J18_0076B21: 祖堂にして説法し給へと願求せらる。師再三固辭す
J18_0076B22: 師心願ありて久しく高座に登りて説法せず故に辭退
J18_0076B23: に及べり。仍て良秀上人駕を師の草庵に枉て自から
J18_0076B24: 請じて云く。我老僧の勞を思はざるにはあらず唯憾
J18_0076B25: むらくは本山大師前の法縁を闕ことを。我深く是を憂
J18_0076B26: るのみ。師若大師前にありて纔に口を開かば上祖恩
J18_0076B27: を報し下愚迷を度し又我望を滿足す。末寺檀家一統
J18_0076B28: に求願する所なり機縁既に熟す何ぞ是を思はざる
J18_0076B29: や。且密に高貴の命の我に託して請ずるあり固辭す
J18_0076B30: ることなかれと。爰に於て師已ことを得ず遂に許諾し畢
J18_0076B31: れり。時維八月。師本堂大師の前に説法す。洛中の
J18_0076B32: 緇素歡喜踊躍して曉天を侵して至る堂上の貴族商家
J18_0076B33: の男女席を爭ひ座を奪ふ門庭群を成して更に寸隙な
J18_0076B34: し。是のごとくすること七日説法既に畢りぬ。回向

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