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J2640 厭求上人行状記 祐山 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0075A01: なり。專ら佛法を誹り經論の語を以て悉く誑惑の語
J18_0075A02: とす。國中の僧俗佛法に志す者意憤憤たれども彼に
J18_0075A03: 對して口を開く事あたはず皆以て諂佞するのみ。然
J18_0075A04: るに彼老臣今般恒に師に隨從す。師舌を動すことあれ
J18_0075A05: ば必ず耳を傾けて聽。唯默然としてこれを窺ふて更
J18_0075A06: に一語を吐ず。諸人悉く怪しみて思へらく。師に歸依
J18_0075A07: すとやせん。將師の短を伺ふて誹るべき端とやせん。
J18_0075A08: 必ず仔細あるべしと。師或日仙石氏の家に在て法話
J18_0075A09: す。彼老臣又從ひ聞。從容として師に謂て云く。師の
J18_0075A10: 所説の如きは則ち眞の佛法なり諸法に通達して幽玄
J18_0075A11: の妙理明なること鏡に向ふがごとし。我年來の疑滯
J18_0075A12: 消散し盡ぬ。從來の非を改め始めて佛法を信ず長命
J18_0075A13: の故を以て我今日幸に師に逢ふ事を得たり。今日よ
J18_0075A14: り誓ふて師の弟子と成る更に師敎に違はじと則ち日
J18_0075A15: 課念佛を受又師の所持の數珠を求めて以て受法の印
J18_0075A16: 信とす。師更に誡めていはく汝年來佛法を誹謗し他
J18_0075A17: の信心を妨ぐ其罪無量なり。死して必ず無間地獄に
J18_0075B18: 墮べし。然るに今發心して佛法に歸命し念佛を信ず
J18_0075B19: 念佛の功力は能五逆をして淨土に生ぜしむ。念念の
J18_0075B20: 稱名は常懺悔なり汝常に念佛して怠ることなかれと。
J18_0075B21: 仙石氏の云く一騎當千の佛法の大敵今般師に歸伏
J18_0075B22: す。彼一人を度する事即ち萬人を度するに當る。以
J18_0075B23: 後彼必ず念佛の先鋒と成りて國中を勸勵して大ひに
J18_0075B24: 佛法を興すべしと。後果して然り。師彼地に留ること
J18_0075B25: 多日。君臣及び國民を敎化して辭して歸る。大守又命
J18_0075B26: じて師を洛東に送らしむ。此仙石氏は常に仁心いと
J18_0075B27: 深く禽獸まで慈愛に懷きけり。平日諸鳥來り馴て手
J18_0075B28: 中に喙む。師にも喙せ玉へと申されける。仍て師も
J18_0075B29: 又手を出して啄せ玉ふに諸鳥同じく手中に來りて恐
J18_0075B30: るる色なし。師の侍者或は仙石氏の近習の輩喙せて
J18_0075B31: 試るに諸鳥恐れてにげ去る見聞の人感歎せずといふ
J18_0075B32: ことなし。今般仙石氏の宅にて師説法の節國中へ觸
J18_0075B33: を廻し來る幾日より何日までは何村より何村の者共私宅
J18_0075B34: へ來り聽聞すべしとて日日仙石氏の屋敷へ國中の老

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