浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0075A01: | なり。專ら佛法を誹り經論の語を以て悉く誑惑の語 |
J18_0075A02: | とす。國中の僧俗佛法に志す者意憤憤たれども彼に |
J18_0075A03: | 對して口を開く事あたはず皆以て諂佞するのみ。然 |
J18_0075A04: | るに彼老臣今般恒に師に隨從す。師舌を動すことあれ |
J18_0075A05: | ば必ず耳を傾けて聽。唯默然としてこれを窺ふて更 |
J18_0075A06: | に一語を吐ず。諸人悉く怪しみて思へらく。師に歸依 |
J18_0075A07: | すとやせん。將師の短を伺ふて誹るべき端とやせん。 |
J18_0075A08: | 必ず仔細あるべしと。師或日仙石氏の家に在て法話 |
J18_0075A09: | す。彼老臣又從ひ聞。從容として師に謂て云く。師の |
J18_0075A10: | 所説の如きは則ち眞の佛法なり諸法に通達して幽玄 |
J18_0075A11: | の妙理明なること鏡に向ふがごとし。我年來の疑滯 |
J18_0075A12: | 消散し盡ぬ。從來の非を改め始めて佛法を信ず長命 |
J18_0075A13: | の故を以て我今日幸に師に逢ふ事を得たり。今日よ |
J18_0075A14: | り誓ふて師の弟子と成る更に師敎に違はじと則ち日 |
J18_0075A15: | 課念佛を受又師の所持の數珠を求めて以て受法の印 |
J18_0075A16: | 信とす。師更に誡めていはく汝年來佛法を誹謗し他 |
J18_0075A17: | の信心を妨ぐ其罪無量なり。死して必ず無間地獄に |
J18_0075B18: | 墮べし。然るに今發心して佛法に歸命し念佛を信ず |
J18_0075B19: | 念佛の功力は能五逆をして淨土に生ぜしむ。念念の |
J18_0075B20: | 稱名は常懺悔なり汝常に念佛して怠ることなかれと。 |
J18_0075B21: | 仙石氏の云く一騎當千の佛法の大敵今般師に歸伏 |
J18_0075B22: | す。彼一人を度する事即ち萬人を度するに當る。以 |
J18_0075B23: | 後彼必ず念佛の先鋒と成りて國中を勸勵して大ひに |
J18_0075B24: | 佛法を興すべしと。後果して然り。師彼地に留ること |
J18_0075B25: | 多日。君臣及び國民を敎化して辭して歸る。大守又命 |
J18_0075B26: | じて師を洛東に送らしむ。此仙石氏は常に仁心いと |
J18_0075B27: | 深く禽獸まで慈愛に懷きけり。平日諸鳥來り馴て手 |
J18_0075B28: | 中に喙む。師にも喙せ玉へと申されける。仍て師も |
J18_0075B29: | 又手を出して啄せ玉ふに諸鳥同じく手中に來りて恐 |
J18_0075B30: | るる色なし。師の侍者或は仙石氏の近習の輩喙せて |
J18_0075B31: | 試るに諸鳥恐れてにげ去る見聞の人感歎せずといふ |
J18_0075B32: | ことなし。今般仙石氏の宅にて師説法の節國中へ觸 |
J18_0075B33: | を廻し來る幾日より何日までは何村より何村の者共私宅 |
J18_0075B34: | へ來り聽聞すべしとて日日仙石氏の屋敷へ國中の老 |