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J2640 厭求上人行状記 祐山 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0067A01: 惡を擇ばず是を信じ是を修すれば安心の地に至り大
J18_0067A02: 安樂を得。智者はこれを知る愚者は知らず。是を謗り
J18_0067A03: 是をあざける唯糟粕を食ふて徒に空病を生ず。眼は
J18_0067A04: 盲の如く諸法を見ず。耳は聾者に似て妙法を聞ず。意は
J18_0067A05: 井蛙の如く僅に胸中方寸の地を知りて未だ法界心性
J18_0067A06: の大海を伺はず。形は佛家に在て心は邪見に墮し自
J18_0067A07: 他共に損ず憐れむべし悲しむべし。是の如きの愚人
J18_0067A08: は循業發現して當來定めて熱鐵丸を呑日あらん。即
J18_0067A09: ち是他作にあらず是心是地獄是心獄人なり擬議する
J18_0067A10: 事なかれと。時に別傳和尚舌を吐て云く一別以來未
J18_0067A11: だ久しからず何ぞ徹透することの玆に至れるや。今日
J18_0067A12: 始めて知る市中の猛虎又頭角を生ずることをと。則ち
J18_0067A13: 大衆をして各各師を拜せしむ。又隨て稱歎して云く
J18_0067A14: 厭長老は淨土の大導師兼て又禪を得たり。實に是自
J18_0067A15: 然悟道の人直に萬重の關を透りて靑霄裡にも留らざ
J18_0067A16: るの漢にして即ち我法弟なりと。別傳和尚は惠林禪
J18_0067A17: 師の法嗣なり昔年黄檗に在りし日。師と共に法話す。
J18_0067B18: 故に一別以來の詞あり。師の禪林諸大宗師の爲に稱
J18_0067B19: 譽せらるる事是の如し
J18_0067B20: ○或時羽州湯殿山に登る。驛次羽州山形邑の裡に草
J18_0067B21: 苅氏入道勇大と云者あり。元江戸に在て儒醫たり老
J18_0067B22: 後に發心出家し山形に幽栖す。遠く師の名を聞上洛
J18_0067B23: して師の所在を探り求む。人告ていはく師は湯殿山
J18_0067B24: に登らんと欲して今江戸にあり不日に其地に至るべ
J18_0067B25: しと。勇大聞得て且泣且喜び晝夜を分たずして山形
J18_0067B26: に歸り。人を道に出し師の來るを伺はしむ。往來の
J18_0067B27: 僧を見て日日尋問す。一日師果して至る。勇大甚だ
J18_0067B28: 歡喜し地に拜伏しく暫らく此處に留らん事を乞ふ。
J18_0067B29: 師即ち室に入りて其故を問ふ。勇大答へていはく予
J18_0067B30: 始は儒道を學び中比は禪に參じ後には念佛を修す。
J18_0067B31: 然るに佛書を披けば經經異説し諸師の義立解釋多端
J18_0067B32: なり仍て今大疑團を生ず。明師に謁して此疑團を打
J18_0067B33: 破せんと欲すれども未だ其人にあはず。まさに此生
J18_0067B34: を誤らんとす。願はくは師慈を垂て我を救濟せよ

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