浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0065A01: | 密に乞て梓に鏤め題して念佛安心といふ世に現行 |
J18_0065A02: | す。一日師偶これを見て失する所あるが如く嗟歎す |
J18_0065A03: | る事久し。是より後若記することあれば自から書して |
J18_0065A04: | 更に他筆を用ひず |
J18_0065A05: | ○師勢州に往豐原の山中に草庵を結びて住居せら |
J18_0065A06: | る。其庵今は念佛寺と號すその草庵尤窄少にして僅に膝を容るるば |
J18_0065A07: | かりなり。此内に閑坐して念佛するのみ。その餘は忘 |
J18_0065A08: | れたるがごとし一向稱名の外餘言なし。近里遠村渴 |
J18_0065A09: | 仰信伏す又射和及び中萬には年來師に歸依するもの |
J18_0065A10: | 多し仍て師恒に此等の處に遊化せらる。又鷹司前殿 |
J18_0065A11: | 下景興院并に慈受院瑞藤御所故醍醐亞相華光院の請に應じて時 |
J18_0065A12: | 時洛陽に至る。固辭すれども許さず已ことを得ざるに |
J18_0065A13: | 迫りて然り。徒然草の要草といへる書は此豐原にて |
J18_0065A14: | の述作なり。彼書の序に云く。人遠く世に捨られて柴 |
J18_0065A15: | のあみ戸をささねどとふ人の跡なき草の庵の門に明 |
J18_0065A16: | 暮彌陀の名號をとなへ居れども。心は山の猿に似て |
J18_0065A17: | 五欲の枝にとび移りてよしなしことのそこはかとなく |
J18_0065B18: | おこり。思ひは野の駒のやうに六薼の境にあれはし |
J18_0065B19: | りてあやしく物ぐるほし。是妄念とやせん亦心しば |
J18_0065B20: | しばをこるとやいはん。折にふれては此文をひろげ |
J18_0065B21: | て見ぬ世の人を友とするはこよなうなぐさむわざな |
J18_0065B22: | れど。事しげくてまぎるる方あれば我爲に利ありと |
J18_0065B23: | 思ふ段をえらびて粗書ぬき私に益ともならむ義理の |
J18_0065B24: | うかべば。えかたにとりなししどろもどろに書付と |
J18_0065B25: | こなつに無始の煩惱取付身の蚊はらひ扇のしめとも |
J18_0065B26: | なれがしと思ひて。すれずれかなめ草と名づけ。腰 |
J18_0065B27: | づけにしてあふげどあふげど凉しからぬ心のぬるさこそ |
J18_0065B28: | いと口おしけれ。腰づけに付て見んとておぼへか |
J18_0065B29: | く。いやはやはらの皮のきんちやく。勢州櫛田川。 |
J18_0065B30: | 豐原の里天王山に住する折書すと |
J18_0065B31: | ○師既に他の開示によらずして自然と敎外の禪關に |
J18_0065B32: | 徹透せり。因て黄檗山第二代木庵禪師。第三代惠林 |
J18_0065B33: | 禪師。嵯峨獨照和尚。梅畑の淸雲和尚。河州惠極和 |
J18_0065B34: | 尚と常に法話して法喜の遊を成し道契頗る深し。一 |