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J2640 厭求上人行状記 祐山 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0065A01: 密に乞て梓に鏤め題して念佛安心といふ世に現行
J18_0065A02: す。一日師偶これを見て失する所あるが如く嗟歎す
J18_0065A03: る事久し。是より後若記することあれば自から書して
J18_0065A04: 更に他筆を用ひず
J18_0065A05: ○師勢州に往豐原の山中に草庵を結びて住居せら
J18_0065A06: る。其庵今は念佛寺と號すその草庵尤窄少にして僅に膝を容るるば
J18_0065A07: かりなり。此内に閑坐して念佛するのみ。その餘は忘
J18_0065A08: れたるがごとし一向稱名の外餘言なし。近里遠村渴
J18_0065A09: 仰信伏す又射和及び中萬には年來師に歸依するもの
J18_0065A10: 多し仍て師恒に此等の處に遊化せらる。又鷹司前殿
J18_0065A11: 景興院并に慈受院瑞藤御所故醍醐亞相華光院の請に應じて時
J18_0065A12: 時洛陽に至る。固辭すれども許さず已ことを得ざるに
J18_0065A13: 迫りて然り。徒然草の要草といへる書は此豐原にて
J18_0065A14: の述作なり。彼書の序に云く。人遠く世に捨られて柴
J18_0065A15: のあみ戸をささねどとふ人の跡なき草の庵の門に明
J18_0065A16: 暮彌陀の名號をとなへ居れども。心は山の猿に似て
J18_0065A17: 五欲の枝にとび移りてよしなしことのそこはかとなく
J18_0065B18: おこり。思ひは野の駒のやうに六薼の境にあれはし
J18_0065B19: りてあやしく物ぐるほし。是妄念とやせん亦心しば
J18_0065B20: しばをこるとやいはん。折にふれては此文をひろげ
J18_0065B21: て見ぬ世の人を友とするはこよなうなぐさむわざな
J18_0065B22: れど。事しげくてまぎるる方あれば我爲に利ありと
J18_0065B23: 思ふ段をえらびて粗書ぬき私に益ともならむ義理の
J18_0065B24: うかべば。えかたにとりなししどろもどろに書付と
J18_0065B25: こなつに無始の煩惱取付身の蚊はらひ扇のしめとも
J18_0065B26: なれがしと思ひて。すれずれかなめ草と名づけ。腰
J18_0065B27: づけにしてあふげどあふげど凉しからぬ心のぬるさこそ
J18_0065B28: いと口おしけれ。腰づけに付て見んとておぼへか
J18_0065B29: く。いやはやはらの皮のきんちやく。勢州櫛田川。
J18_0065B30: 豐原の里天王山に住する折書すと
J18_0065B31: ○師既に他の開示によらずして自然と敎外の禪關に
J18_0065B32: 徹透せり。因て黄檗山第二代木庵禪師。第三代惠林
J18_0065B33: 禪師。嵯峨獨照和尚。梅畑の淸雲和尚。河州惠極和
J18_0065B34: 尚と常に法話して法喜の遊を成し道契頗る深し。一

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