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J2640 厭求上人行状記 祐山 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0063A01: 師答へていはく再興は諸檀の力にあり予は唯法施を
J18_0063A02: 以て是を助けんのみ。寺主は外に求めよ我は决して
J18_0063A03: 領掌せすと。爰に於て諸檀歡喜して退き相議して師
J18_0063A04: の弟子誓譽をして寺主たらしむ。師則ち瓧礫場に坐
J18_0063A05: して大法輪を轉ず。貴賤市を成して法義を信受し貨
J18_0063A06: 財を寄捨し幾ならずして堂宇を造立す。是の如きの
J18_0063A07: 興隆唯一二のみにあらず。勢州中萬邑弘道寺も師の
J18_0063A08: 中興する所なり。遠州荒井の念佛寺攝州芥川の萬福
J18_0063A09: 寺。洛北梅が畑の導故院等悉く師の中興せし道塲な
J18_0063A10: り。然るに皆是師の素意に非ず。或は止ことを得ずし
J18_0063A11: てこれを成し。或は時の勢に乘じて自然に功をなす
J18_0063A12: ものなり
J18_0063A13: ○師は常に建立を好まず又常行念佛を嫌へり。平日
J18_0063A14: 徒に示して云く建立は大善功德なりといへ共種種の
J18_0063A15: 煩ひあり猥りに是を作べからず。是を作ば多く魔の
J18_0063A16: 媒と成る。自然に貪欲を增し富家に對して媚を成
J18_0063A17: す。或は早く成就せしめんと欲するに工匠我意に任
J18_0063B18: せざれば覺えず瞋恚を生ず。財ある者は財あるに就
J18_0063B19: て名聞を愛して往生の大利を障ふ。財なき者は財な
J18_0063B20: きに就き利養を貪りて後世の大事を失ふ。口に念佛
J18_0063B21: を修すといへども。心名利に走りて自然に本心を亡
J18_0063B22: 失し永く往生を妨く。若爾らざる人は十が中に一人
J18_0063B23: 或は百が中に五三人のみ。若それ上に利根道心堅固
J18_0063B24: の人は恒に建立を成といへども功德を增進して速に
J18_0063B25: 往生を得べし。其餘はいまた必すしも然らず。唯念
J18_0063B26: 佛して速に往生を遂べきにはしかず。若已ことを得ず
J18_0063B27: して建立を作ことあらば仰いで佛力を念じ深く厭欣心
J18_0063B28: を起し。恒に念佛して是を作べし。但衆人の功によ
J18_0063B29: りて成るべき時を待べし。若是の如くならずんば必
J18_0063B30: ず是を止べし。又常念佛は必ず好むべからず。その
J18_0063B31: 故は結衆信心なれば善事なり若不信心なれば惡事た
J18_0063B32: り。晝夜の念佛は必ず退屈の心を生じて曾て後世を
J18_0063B33: 念はず。世上の産業の如く成りて恒に貪瞋を起し意
J18_0063B34: 名利に走る。檀家も又爾り多分は是名聞にして善人

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