ウィンドウを閉じる

J2640 厭求上人行状記 祐山 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0058A01: 導師とす。師に投じて出家するもの男女老少數百人
J18_0058A02: なり。濃州大垣領庭田の圓滿寺も師を以て中興とす
J18_0058A03: 彼地に師の畵く所の吉水大師の尊影あり
J18_0058A04: ○師或時攝州鮎川に在て楞嚴維摩を披閲す。〓聲を
J18_0058A05: 聞て忽然として省悟あり。是より知解奮發す。深文
J18_0058A06: 奧義竹を破がごとく七通八達ならずといふことなし。
J18_0058A07: 長水法安と并せ案ずべし
J18_0058A08: ○大凡師の性たるや度量廣大にして風韻凡ならず質
J18_0058A09: 直無欲。孝順慈愛天然なり。唯今日ある事を知つて明
J18_0058A10: 日を期せず都て物を蓄へず又悋惜なし得るに隨ひて
J18_0058A11: 是を施す。直言にして佞曲ならす人情に乖くに似た
J18_0058A12: り。他人の苦しみあるを見聞しては己が事の如くす
J18_0058A13: 禽獸といへども又然り。德ありて莊ならず柔和にし
J18_0058A14: て瞋る事なし。衆を愛して閑を好み人に對して世事
J18_0058A15: を語らず。常に世智の者を誡めて云く人間の貧富は
J18_0058A16: 過去の宿業による世人是を知らずみだりに貧を厭ひ
J18_0058A17: 富を願ひ非分に貪り求む。然るに若貧窮の報を受べき
J18_0058B18: 人はたとひ財寶を積て自から守るといへども種種の
J18_0058B19: 災難來りて貧人と成る又福報有人はたとひ貧家に生
J18_0058B20: るといへ共自然に財寶充溢して豐饒自在なり。因て
J18_0058B21: みだりに寶を求る事なかれ若又寶あらばみだりに惜
J18_0058B22: むことなかれ。皆是法界の物なり以て法界に任すべ
J18_0058B23: し。又たとひ財寶を盜るることありとも強て歎くことな
J18_0058B24: かれ己に福分あれば財寶去ても又來る。己に貧分あ
J18_0058B25: るときはたまたま得ても是を失ふ三世因果决定の
J18_0058B26: 報。業に循ふて發現す努力疑ふことなかれ。但俗は念
J18_0058B27: 佛の暇に世務を營むべし僧は常に念佛して世事を思
J18_0058B28: ふことなかれと。師京都にありし時しばしば大雲院に
J18_0058B29: て説法す法雨等しく沾ふて信芽を增長せざるものな
J18_0058B30:
J18_0058B31: ○萬治二年己亥老母に隨ふて攝州有馬の溫泉に浴す
J18_0058B32: るの序。請を得て極樂寺に説法すること一七日。貴賤
J18_0058B33: 歡喜し遠近感動して未曾有なりと稱す。時に寺主榮
J18_0058B34: 譽。老に至りて弟子の繼席すべき者なし。師をして

ウィンドウを閉じる