浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0057A01: | ち佛力を念し力を策して彼舟に飛移り始めて存命す |
J18_0057A02: | ることを得たり。先に乘所の小舟をかへりみれば既に |
J18_0057A03: | 沈沒して跡方なし唯叫喚の聲を聞のみなり |
J18_0057A04: | ○爰に於て師大いに省悟して思へらく。現今目前三 |
J18_0057A05: | 途の苦憐むべく生死の業縁恐るべし。無常の殺鬼は |
J18_0057A06: | 時處をゑらばず賴むべきは本願なり修すべきは念佛 |
J18_0057A07: | なり空しく此地に留るべからずと。是より直ちに濃 |
J18_0057A08: | 州大垣の大運寺に行。德を匿し光を韜みて常念佛の |
J18_0057A09: | 結衆に入り日夜に稱名するのみ。師なりと知るもの |
J18_0057A10: | なし。或時城主僧を選ぶことあり。爰に於て始めて師 |
J18_0057A11: | を知る又其志を感ず。仍て本主等師の説法を請求す |
J18_0057A12: | 師固く辭す衆人再三懇請す。師已ことを得ずして始め |
J18_0057A13: | て法輪を轉ず貴賤歡喜して發心念佛す。專修一行是 |
J18_0057A14: | より弘通す。邪執の安心。謬解の一念自然に亡泯し |
J18_0057A15: | 日課念佛日日月月に盛なり翻邪歸正の僧侶多く弟子 |
J18_0057A16: | と稱し渴仰して師とす。又勢州桑名に行正源寺に住 |
J18_0057A17: | して敎化すること數日。城中城外の貴賤男女席を爭ひ |
J18_0057B18: | 群を成し信伏歸敬して念佛するもの勝て計ふへから |
J18_0057B19: | ず。正源寺は信譽の師。源譽上人所住の地なり則ち |
J18_0057B20: | 故松平越中守曾て源譽を洛の專念寺より此寺に招請 |
J18_0057B21: | す。師は是源譽の法孫なる故に諸人共に請じて此寺 |
J18_0057B22: | に住持せしめんと願ふ。師耳を塞ぎて聞入れず急に |
J18_0057B23: | 走り去る。是より矢田に行。時晩冬なり師七七日別 |
J18_0057B24: | 時念佛す。夜寒忍びがたく又睡催す時は衣服を脱ぎ |
J18_0057B25: | 庭を巡りて稱名せらる。霜雪膚を侵し寒風骨に徹す |
J18_0057B26: | れども確乎として撓む事なし是の如くして障なく七 |
J18_0057B27: | 七日を修滿す諸人舌を卷て凡人に非ずと稱讃す |
J18_0057B28: | ○習年濃州の片山に往き寂靜の地に草庵を結び住居 |
J18_0057B29: | する事數年なり。此間常に法衣を脱ず無益の事を談 |
J18_0057B30: | ぜず日課六萬返六時勤行永く自業とす是より以來終 |
J18_0057B31: | に懈怠せず。時時尾州の熱田。遠州の荒井に遊化 |
J18_0057B32: | す。或は攝州鮎川茨木高槻芥川に往き又洛陽に至 |
J18_0057B33: | る。縁に隨ひ機に應じて接化無究なり有智無智信伏 |
J18_0057B34: | 歸敬する事草の風に偃すが如し當世仰いで念佛の大 |