ウィンドウを閉じる

J2640 厭求上人行状記 祐山 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0057A01: ち佛力を念し力を策して彼舟に飛移り始めて存命す
J18_0057A02: ることを得たり。先に乘所の小舟をかへりみれば既に
J18_0057A03: 沈沒して跡方なし唯叫喚の聲を聞のみなり
J18_0057A04: ○爰に於て師大いに省悟して思へらく。現今目前三
J18_0057A05: 途の苦憐むべく生死の業縁恐るべし。無常の殺鬼は
J18_0057A06: 時處をゑらばず賴むべきは本願なり修すべきは念佛
J18_0057A07: なり空しく此地に留るべからずと。是より直ちに濃
J18_0057A08: 州大垣の大運寺に行。德を匿し光を韜みて常念佛の
J18_0057A09: 結衆に入り日夜に稱名するのみ。師なりと知るもの
J18_0057A10: なし。或時城主僧を選ぶことあり。爰に於て始めて師
J18_0057A11: を知る又其志を感ず。仍て本主等師の説法を請求す
J18_0057A12: 師固く辭す衆人再三懇請す。師已ことを得ずして始め
J18_0057A13: て法輪を轉ず貴賤歡喜して發心念佛す。專修一行是
J18_0057A14: より弘通す。邪執の安心。謬解の一念自然に亡泯し
J18_0057A15: 日課念佛日日月月に盛なり翻邪歸正の僧侶多く弟子
J18_0057A16: と稱し渴仰して師とす。又勢州桑名に行正源寺に住
J18_0057A17: して敎化すること數日。城中城外の貴賤男女席を爭ひ
J18_0057B18: 群を成し信伏歸敬して念佛するもの勝て計ふへから
J18_0057B19: ず。正源寺は信譽の師。源譽上人所住の地なり則ち
J18_0057B20: 故松平越中守曾て源譽を洛の專念寺より此寺に招請
J18_0057B21: す。師は是源譽の法孫なる故に諸人共に請じて此寺
J18_0057B22: に住持せしめんと願ふ。師耳を塞ぎて聞入れず急に
J18_0057B23: 走り去る。是より矢田に行。時晩冬なり師七七日別
J18_0057B24: 時念佛す。夜寒忍びがたく又睡催す時は衣服を脱ぎ
J18_0057B25: 庭を巡りて稱名せらる。霜雪膚を侵し寒風骨に徹す
J18_0057B26: れども確乎として撓む事なし是の如くして障なく七
J18_0057B27: 七日を修滿す諸人舌を卷て凡人に非ずと稱讃す
J18_0057B28: ○習年濃州の片山に往き寂靜の地に草庵を結び住居
J18_0057B29: する事數年なり。此間常に法衣を脱ず無益の事を談
J18_0057B30: ぜず日課六萬返六時勤行永く自業とす是より以來終
J18_0057B31: に懈怠せず。時時尾州の熱田。遠州の荒井に遊化
J18_0057B32: す。或は攝州鮎川茨木高槻芥川に往き又洛陽に至
J18_0057B33: る。縁に隨ひ機に應じて接化無究なり有智無智信伏
J18_0057B34: 歸敬する事草の風に偃すが如し當世仰いで念佛の大

ウィンドウを閉じる