浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
巻_頁段行 | 本文 |
---|---|
J18_0056A01: | に大灸を以てす艾草百目を束ねて一壯とすその大さ |
J18_0056A02: | 拳の如し。是を脊の上に置て火を點ず師怡然として |
J18_0056A03: | 是を受て堪忍し面色變ぜず小苦なきに似たり。諸人 |
J18_0056A04: | 怪みて灸火の盡るを待てその苦熱を問ふ。師答へて |
J18_0056A05: | 云く小苦あることなしと。諸人驚き見るに都て灸の跡 |
J18_0056A06: | なし但懷中なる守袋より煙の出るあり守袋の内外燒 |
J18_0056A07: | 拔たり。即ち是此守袋の佛代りて苦を受るのみ吁奇 |
J18_0056A08: | なる哉。此守は法印何某の加持する所なり。師の母 |
J18_0056A09: | 歡喜して此由を彼法印に語る。法印の云く我曾て守 |
J18_0056A10: | 護を施與すること許若千人なりき終にいまだ師の如き |
J18_0056A11: | 代受苦の事ある事を聞ず是はこれ他にあらず師の信 |
J18_0056A12: | 力強盛の感應なりと。その幼齡にして但信徹骨なる |
J18_0056A13: | 事是の如し。他日他力本願を仰信する事も又是の如 |
J18_0056A14: | くなるべき旨ここにあらはれたり。栴檀は二葉より |
J18_0056A15: | 香しといふは實に虚語にあらず |
J18_0056A16: | ○師歳漸く長じて十七なりしかば。宗の式法に任せ |
J18_0056A17: | て修學の爲武州江戸に下り靈巖寺の珂山和尚に隨 |
J18_0056B18: | ふ。和尚一見器許し一宗の秘賾宗戒布薩これを傳へ |
J18_0056B19: | て餘蘊なし。師自から淨敎を研究して晝夜をわかた |
J18_0056B20: | ず又兼て諸經論を探りて其幽致を究む。惠解天然に |
J18_0056B21: | して錐囊を脱するが如し是を講ずる時は辨懸河のご |
J18_0056B22: | とく人心を感動せしむ。既にして飯沼弘經寺に行き |
J18_0056B23: | 宗閑和尚に就て修學す其後又靈巖寺に歸る |
J18_0056B24: | ○明曆二年丁酉正月十八十九兩日江戸大火にて城中 |
J18_0056B25: | 并に城外諸侯の亭館商家民屋一時に煨燼す。逃遁る |
J18_0056B26: | る道なふして燒死する者數萬人に及ぶ靈巖寺も又火 |
J18_0056B27: | 裡にあり。師走り出て河邊に至る橋既に燒落て又船 |
J18_0056B28: | 筏なし惘然として佇立せり。忽ち男女數輩小船に棹 |
J18_0056B29: | して河岸に寄來る。師喜びてこれに乘り漸く火災を |
J18_0056B30: | 脱れて既に中流にいたる。更閑夜深て竿を折き橈を |
J18_0056B31: | 絶つ。水深して底なくいかんともすべきやうなし。運 |
J18_0056B32: | に任せて遙に海上に出づ暴風船を簸て波濤山の如し |
J18_0056B33: | 忽ち水底に沈沒せんとす。時に何くともなく船一艘 |
J18_0056B34: | 衝來りて行違ふ。其間相去ること一丈ばかりなり師即 |