浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0055A01: | 厭求上人行狀記 |
J18_0055A02: | |
J18_0055A03: | 師諱は貞憶後に厭求と改む。眞蓮社廣譽心阿は本宗 |
J18_0055A04: | 恒式の別號なり。俗姓は村上源氏。平安城の人な |
J18_0055A05: | り。寬永十年癸酉二月四日に誕生す。幼稚なりし時 |
J18_0055A06: | 伯父武藤氏に就て射を學ぶ。伯父篤信にして時時一 |
J18_0055A07: | 僧を宅に請じて供養し身を屈して給仕すること君父に |
J18_0055A08: | 事るが如くす。師或日彼僧の草庵に行て見るに獨住 |
J18_0055A09: | 單丁の野僧なり。師ひそかに思へらく伯父は是衆人 |
J18_0055A10: | の長にして從者數輩あり。然るに身を謙りて獨庵の |
J18_0055A11: | 僧を恭敬すること奴婢の主人に事るが如くす。佛法の |
J18_0055A12: | 威力妙なるかな奇なるかな言語の及ぶ所にあらずわ |
J18_0055A13: | れ誓ふて必ず出家すべし仕官の榮を期すべからず |
J18_0055A14: | と。是より後毎夜夢中に一僧來り告て云く。出家修 |
J18_0055A15: | 道は一大事因縁なり小縁の事にあらずたとひ燒火僧 |
J18_0055A16: | も一千戸の官人に勝れり汝早く出家すべしと。故を |
J18_0055A17: | 以て師父母に告て素懷をとげん事を乞ふ。父母堅く |
J18_0055B18: | 許さず。已ことを得ずして師自から髻を截て切に入道 |
J18_0055B19: | を願求す。父大ひに瞋りて一室に籠居させ永く外出 |
J18_0055B20: | を禁ず。其後幾ならざるに父卒去しぬ。師歎息して |
J18_0055B21: | 云く我家に在て父に仕へて孝を行ふことあたはず。既 |
J18_0055B22: | に孝道を欠。又出家して父の後世を吊ふことを得ず現 |
J18_0055B23: | 當の大事兩ながら失却すいかがせんいかがせんとて哭泣悶 |
J18_0055B24: | 絶す。母見て驚歎して云く。異しひかな吁汝は我子 |
J18_0055B25: | にあらじ幼年にしてよく是の如きの善語を吐出せり |
J18_0055B26: | 我何んぞ汝が出家を障んや。然共今年は期の喪一周忌ま |
J18_0055B27: | でを期の喪と云を守りて宜しく老父の命に隨ふべし明年にい |
J18_0055B28: | たらば我汝が素意を遂るに任すと。爰におゐて師欣 |
J18_0055B29: | 然たり光陰程なく遷り往て期の喪既に畢りぬ。正保 |
J18_0055B30: | 二年乙酉五月二日歳十三にして洛の專念寺信譽上人 |
J18_0055B31: | に投じて剃染受戒す。信譽則ち淨土三部妙典六時禮 |
J18_0055B32: | 懺を授けて讀誦せしむ數月ならずして暗誦し更に一 |
J18_0055B33: | 字を失せずその聰明絶倫なること是の如し見聞の者歎 |
J18_0055B34: | じて異人とす。師偶一日過あり信譽是を咎めて責る |