ウィンドウを閉じる

J2620 以八上人行状記 素信 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0773A01: 十四日むまの刻頭北面西にして念佛と共にねふるが
J17_0773A02: ごとく安詳としていきたへたまひぬ。世壽七十五。
J17_0773A03: 法臘六十五なりき。このとき道俗男女なごりをおし
J17_0773A04: みたてまつり歎きしたふこと考妣をうしなへるがご
J17_0773A05: とし。
J17_0773A06: ○師の臨終のきざみ天花ふりくだり異香薰じわた
J17_0773A07: る。東西おのおの數里。南北もまたしかり。そのは
J17_0773A08: な地をさる事一尺ばかりにして消。あるひは人の頭
J17_0773A09: 上にかかり。あるひはたなこころに受るも一尺ばか
J17_0773A10: りにして則ちきへさりぬ。翌翌日尊體 廿日市湖音
J17_0773A11: 寺にほうむる。すでにふねをうかぶるにおよびて天
J17_0773A12: 花また前のごとく降くだる海陸繽紛として雪のふる
J17_0773A13: がごとし。棺既に湖音寺にいり燒香等おはりて墓所
J17_0773A14: におくるときまた天花降くだること前のごとくにて
J17_0773A15: はなはだ薰れり。上來三度の靈瑞見聞の道俗貴賤隨
J17_0773A16: 喜感歎せずといふことなかりき。師の墳墓の脇に大
J17_0773A17: 松樹あり光明の松といひつとふ。師臨終のときいつ
J17_0773B18: くしまより光明來りて此松にかかるゆへにといへり
J17_0773B19: 今にいたりて光明院住僧代代の墳墓を此ところにき
J17_0773B20: づき來れり。また師康存の日此湖音寺主へたまはり
J17_0773B21: たる書翰いま現在して什寶たり。
J17_0773B22: ○師の弟子に林譽故庵といへる僧あり。おりしも遠方
J17_0773B23: へ行て終焉にあひ奉らず。やうやく送葬の期におよ
J17_0773B24: びてかへり來れり。仍て嗟歎懊惱すること限りな
J17_0773B25: し。止ことを得ずして其日即捨身命終せり。これ來
J17_0773B26: 生の隨從をいそぐ心にもやあらん。師の高德たる。
J17_0773B27: 物のなさけを感ぜしむる事かくのごとし。
J17_0773B28: ○辨蓮社良定帒中和尚は師の同母弟なり。智道兼備
J17_0773B29: なること世こぞりてこれをしれり。或時師の許にき
J17_0773B30: たりて異朝へわたらんとおもふ由をかたる。師これ
J17_0773B31: を詰していはく。汝從來日本へつたはる所の經論章
J17_0773B32: 疏等あまねく披閲して是を明らめ得たるやいなや。
J17_0773B33: 若これを曉らめ得ても心頭いまだ安からずんば則ち
J17_0773B34: 渡海せよ。我あへてとどめずとありければ。定公一

ウィンドウを閉じる