浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0772A01: | ぬ。天正十年直家もまた逝す。其嗣子秀家もつみあ |
J17_0772A02: | りて流刑に處せらる。因果報應の跡昭然たり。しか |
J17_0772A03: | れども誕生寺は終に異流にしづむこと年久し。依て |
J17_0772A04: | 諸檀信再興のこころざしを發すといへども住持いま |
J17_0772A05: | だ本宗に復することあたはず。ときに師。いつくし |
J17_0772A06: | まにあり。祖跡をしたひきたり見たまふに其廢亡目 |
J17_0772A07: | もあてられぬありさまなり。師ふかくこれをいた |
J17_0772A08: | み。いかにもして再興せんと。心肝をくだくこと言 |
J17_0772A09: | 語にたへたり。よつて住持に。祖跡の由來をかたり |
J17_0772A10: | なげき。しきりに勸誘せられけるに。住持のいはく。 |
J17_0772A11: | 予もまたそのこころざしなきにあらずといへども。 |
J17_0772A12: | 事をはかるべきちからなしと。師悅びていはく。そ |
J17_0772A13: | の資料は我寄捨せんと。急ぎいつくしまにかへり弟 |
J17_0772A14: | 子雲譽をつかはし住持とともに洛の本山智恩院にゆ |
J17_0772A15: | きてくだんのむねをうつとふ。時に知恩院主誠譽大 |
J17_0772A16: | 和尚すみやかに領掌ありて。雲譽ならびに誕生寺住 |
J17_0772A17: | 持を率ひて禁闕にのぼり以聞せらる。 |
J17_0772B18: | 龍顏感ありて不日に綸命をくだしたまはり本に復し |
J17_0772B19: | ぬ深譽おほひによろこびて本州にかへり再營を縡と |
J17_0772B20: | す。今般誕生寺再興の事ひとへに師の丹誠によるも |
J17_0772B21: | のなり。その功禹の下にあらずといふべし。 |
J17_0772B22: | ○大凡そ當今末法五濁惡世にて。出離生死の要行は |
J17_0772B23: | 本願ねんぶつの法門のみ。ときにいたり機にかなふ |
J17_0772B24: | がゆへに師の平素自行化他一向專修の勤行にて餘課 |
J17_0772B25: | をとどめたまはざりき。道俗男女たまたま禮謁をと |
J17_0772B26: | ぐるものも法澤にうるほはずといふことなし。當時 |
J17_0772B27: | 藝防等の諸州淨業ねんぶつの流行するはみなこれ師 |
J17_0772B28: | の德光なり。師いつくしまにありてあまねく化やく |
J17_0772B29: | をほどこさるることおよそ三十年の星霜を經たり。 |
J17_0772B30: | ○慶長十九甲寅年なつのころややなやみたまふこと |
J17_0772B31: | あり。仲秋にいたりて不食の所勞增氣したまへり。 |
J17_0772B32: | 病床にふしたまふといへども日課稱名すこしもおこ |
J17_0772B33: | たりなく道俗男女きたり訪ふともがらに對して法要 |
J17_0772B34: | をときしめさるる事もまた尋常のごとし。終に九月 |